【メソッド2】(???)にこそ大切なメッセージがある

 その後、経営も軌道に乗った1972年、それまでの山本豆腐店から、とようけ屋山本と改名します。店名の由来は、伊勢神宮の食物の神様「豊受大神宮(とようけだいじんぐう)」にちなみました。改名してからも、さらに美味しい豆腐作りの研究に明け暮れる毎日。

湯豆腐に最適な絹ごし豆腐が完成

 そして、88年に、これまで製造が難しく業界では敬遠されていた、天然にがりを100%使った絹ごし豆腐の製造に成功しました。山本さんが追い求めてきた「湯豆腐に最適な絹ごし豆腐」が完成したのです。

天然にがり100%の絹ごし豆腐が完成。湯豆腐にぴったり

 この絹ごし豆腐の完成を機に、「本当に美味しい湯豆腐を大勢の人に食べて欲しい!」との思いから、山本さんは北野天満宮の鳥居前に、豆腐料理専門店「とようけ茶屋」を開業。建設費の総額は、ナント! 2億円。当時、世間はバブル経済真っ只中。「家族からは『豪邸が建つ金額やんか!』とえらい言われました」と山本さん。奥様の成子さんも「言い出したら聞かないんです」と苦笑いするしかなかったそうです。

 当時のメインメニューは、山本さん自慢の「湯豆腐」のみ。2億円を投じてまで建てた、夢の店舗でしたが、期待とは裏腹に、閑散とした日々が続きました。2度目のピンチが訪れます。「かみさんは怒るし、どうしようかと思いました」とこれまた笑顔で振り返る山本さん。

 そんなある日。「アルバイトの子に『この豆腐でどんぶり作ったらどうです?』と言われたんです。そんなん売れるんかなぁ、と思いました」と、始めは半信半疑でした。しかし、とにかくやってみようと、丼のメニューを考えた山本さん。

 悩んだ末に考え出したのが、自分が大好きな「豆腐のうま煮」をご飯にのせた「とようけ丼」でした。豆腐と椎茸、九条ねぎなどを甘辛く煮込んだうま煮とご飯の相性がとっても良いこのとようけ丼に、酢の物や湯葉の小鉢がつくセットメニューで、お値段は700円。これが驚くほどの大当たり! 女性はもちろん、天満宮に来た修学旅行生にも食べられるリーズナブルさが人気となり、混雑時には2時間半待ちになるほどの大盛況となりました。

ピンチを救った「とようけ丼」

 とようけ丼はアルバイトスタッフの一言から考え出されました。それが、各地からお客を呼ぶ店の看板メニューとなったのです。「人の言葉は神の声です。それを受け入れるか逃すのか。耳障りな言葉もあります。それを耳障りと思うか、思わないかやないですか」。齢80を重ねられた人生の大先輩でありながら、なお若者の言葉を素直に受け入れられる山本さん。筆者もひたすら反省です。

【メソッド2】( 耳ざわりな意見 )にこそ大切なメッセージがある

そして、メソッド3です。

【メソッド3】(???)は素直に認める柔軟な(???)

 

 今年で創業119年目。常にお客に喜んでもらえる味と値段にこだわる、とようけ屋山本。今でも新商品の開発にも積極的に取り組み、青紫蘇をカットして入れた「青紫蘇豆腐」や本柚子を入れた「柚子豆腐」などを発売しました。また、とようけ茶屋でもスイーツ開発を手掛け「豆乳ヨーグルト」「シナモン豆腐」「とようけ饅頭」など、「とようけ丼」に続く、ヒット商品を次々と考え出してきました。

 さらに石鹸専門店「京都しゃぼんや」と共同で石鹸まで開発しました。しかもこの石鹸、普通石鹸は泡立てて使いますが、この石鹸は粘りで汚れを落とす石鹸なんです。とようけ屋の豆乳にオリーブオイルとシルクパウダーを加える事で、普通の豆乳石鹸では出ない、粘りを実現しました。この粘りの中に入っている、美肌成分や潤い成分が女性の間で大ヒットとなり、年間1万2000個も売れるそうなんです。