では、たねやのメソッドをまとめてみましょう。

【たねやの「変わらずに変わる」メソッド】 

【メソッド1】変わらない味を守るために( 変える )

 

【メソッド2】柔軟な発想で和菓子の( 楽しみ方 )を広げる

 

【メソッド3】自社で( 山野草 )を育て季節感を演出

 

【メソッド4】斬新なスタイルで( 洋菓子 )にも革命を起こす

 

 毎回番組では、取材の最後に、「おとなフィロソフィ」と名づけて、経営者やリーダーに企業理念や経営哲学を端的に語ってもらっています。

 たねやは、老舗の和菓子店でありながら、看板にあぐらをかかず、進化し続け、今も愛される味を提供しています。昌仁社長の「おとなフィロソフィ」とは……。

 「『たかだか』お菓子かもしれませんが、その『たかだか』を一生懸命やっていきたいです。そして、お菓子を通じて会話が広がる、楽しい和菓子を提供し続けて、いかに喜んでいただけるかを胸に刻んでいます」

 伝統あるお店を継いでいくことは、その方にしか知りえない重圧があると思います。その「伝統とは?」を常に考えていたからこそ、「時代と歩む」という解を導き出した昌仁さん。それは常にお客様に喜んでいただくには? という思いにありました。

 
たねやは和菓子で時代とともに歩んできた
たねやは和菓子で時代とともに歩んできた
 

 お菓子屋の息子だからこそ味わえた最高の味をお客様にも楽しんでいただきたい。それは伝統の味があったからこそ、具現化できたものでもあります。

 きっとこれらはさらに積み重なり、たねやの伝統はさらに年輪を重ねていくことでしょう。

 バームクーヘンのように。

(この記事は「~オトナ度ちょい増しTV~おとな会」2017年5月3日分の放送を元に構成しました。文中の数値は放送時のものです。編集:日経BP総研 中小企業経営研究所

 甲子園球場の3倍の広さを持つというラコリーナ近江八幡には、たねやグループの本社だけではなく、カフェやショップ、さらには農園までもがある一大テーマパークとなっています。来園者には、原料を作るところから、お菓子を生み出し、最後は食べてもらうまでを楽しみながら理解してもらおうという狙いがあるのでしょう。

 いま、地方の食品メーカーで、こうした施設を展開するケースが増えています。

 例えば、タコ焼き店や焼き芋店・スィートポテト店などを展開する「白ハト食品工業」(大阪府守口市)は茨城県行方市で「なめがたファーマーズヴィレッジ」を運営しています。そこでは、来場者が収穫や料理などを体験することができます。

 北海道の有名菓子メーカー「六花亭」(帯広市)は、レストランや美術館が点在する中札内美術村を運営しています。散策用の遊歩道が整備された敷地の広さは、なんと約14万5000㎡。北海道ならではのスケール感です。

 日本酒「八海山」の蔵元、八海醸造は「魚沼の里」をオープンしています。蕎麦屋や食堂の他に、予約制での酒蔵見学はもちろんのこと、カフェやお菓子などでも日本酒を楽しむことができる施設となっています。

 こうした施設は、単に製品を販売するだけでなく、体験を通じて消費者に製品の背景にある思いや工夫、こだわりなどを知ってもらいたいという、会社側の願いの表れでもあります。コンビニエンスストアやインターネット通販が広まり、消費者が簡単に商品を手にする機会が増えるにつれて、自社のストーリーを大切にしながら発信する企業が目立ち始めています。

 日経BP総研 中小企業経営研究所では、中小企業の情報発信やブランディング、広報戦略などの構築を応援しています。お問い合わせはこちら<からお願いします。

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