和菓子の老舗というと、伝統と格式を重んじ古風な社風のイメージですが、「たねや」の4代目・山本昌仁(まさひと)社長はこう言います。

 「伝統って何かと言われると、私は続けることだと思っています。守ってしまったらその時点で終わりです。お客さんの舌ってどんどん変わっていますから。世の中の空気感をつかんで、今やらなければいけないお菓子を出していくことが使命だと思っています」と、目力の強いお顔から熱いメッセージが溢れてきます。

 
「伝統とは続けること」と話す4代目の山本昌仁社長

 「伝統」という言葉と「変わる」という言葉は、一見、相反するように感じます。しかし、「たねや」は世の中のニーズに合わせ“お客さんが楽しんで食べられる和菓子”を常に追求し、今や年商は193億円になりました。

 とにかく和菓子を楽しく食べてもらうためならどんな労力も厭わない、和菓子愛に溢れた「たねや」の躍進のメソッドを探っていきましょう。

【たねやの「変わらずに変わる」メソッド】 

【メソッド1】変わらない味を守るために(???)

 

【メソッド2】柔軟な発想で和菓子の(???)を広げる

 

【メソッド3】自社で(???)を育て季節感を演出

 

【メソッド4】斬新なスタイルで(???)にも革命を起こす

 

 まずは、メソッド1から。

 

 【メソッド1】変わらない味を守るために(???)

 たねやの本拠地は、創業の地である滋賀県近江八幡市。

 この地に2015年、人と自然がふれあえる「ラコリーナ近江八幡」という広大な空間を作りました。その敷地面積は、甲子園球場3つ分と大変に広い施設です。ここに、ショップはもちろん「和菓子の素材は全て自然から」という社長の考えのもと、田畑や農園を作り、週末ともなると大勢のお客様で大賑わいとなっています。

 
甲子園球場3つ分の広さを持つ「ラコリーナ近江八幡」
 

 この広大な敷地の中に、たねやの本社オフィスも構えました。伝統ある「和菓子屋さん」のオフィスというと、どんなところを想像されるでしょうか? そのオフィスは、高い天井に柱がなく圧倒的な開放感があります。天井から不思議な形のオブジェや自転車が釣り下げられたとてもオシャレな空間で、伝統ある和菓子屋さんのイメージとはかけ離れていました。また、社員同士で活発にコミュニケーションが取れるように、デスクはフリーアドレス制を採用。自由な場所で仕事ができるよう工夫されています。

 

変わっているが、変わらない味

 

 昌仁社長は「テーマは“イマジネーション”です。職場は想像力を増す場と考えています。座って仕事というより、気軽にチームを作って動きまわって本社にいるだけで発想力が増す場にしたいんです」と言います。

 なるほど。思い切りましたね、社長!

 「いまどき『昔ながらの……』だけでは若い人がドンドン離れていきます。まずは『我々スタッフから変わっていこう』ということなんです」

 確かに社員の皆さんは若い方が多く、伝統的な和菓子のイメージにとらわれず新しい発想が湧いてくる雰囲気が感じられます。

 たねやは「伝統を守りながら時代にあった新しいものを」という考えを貫いており、その代表作が創業以来、変わらぬ人気を誇る「栗饅頭」です。

 こちら、見た目は今も昔も変わらない、素朴な形の「これぞお饅頭」という栗饅頭。お客さんも様からも「昔からありますよね、変わらない美味しさだと思います」と言います。昔から安定した変わらない味で、これこそが信頼感につながっています。

 しかし、和菓子づくりを支えて30年以上の大ベテラン製造部部長、藤澤俊夫さんはハッキリとこう言います。

 「変わってますよ、何十回と」

 え! 「変わらぬ味」の栗饅頭は変わっているんですか?

 「栗饅頭は一番お客様に支持されている商品なんで、絶えず、どういう状態であるかは、毎年見ています」

 どういうことでしょうか?