【メソッド1】(???)を確保し最高級のサバをより身近に

 右田さんの作るサバ寿司が人気だった理由は、実はサバそのものにありました。

 そのサバは、通称「エリートサバ」と呼ばれる八戸で水揚げされたもので、ある日、大阪の市場でこのサバを偶然見つけた右田さんは当時の興奮を振り返ります。  「衝撃でしたね。とにかく、一切れ食べたときに、何だこれは! と思いました。青臭いイメージや、生臭さが全くありませんでした」

サバに熱い思いをかける右田孝宣社長
 

 エリートサバは脂が乗って美味しいとされる、青森県・八戸で水揚げされたマサバ(真鯖)の中でも脂質量21%以上・魚体550g以上という基準をクリアしたもので、全体のわずか1%にも満たないブランドサバです。通常のものと大きさを比較しても、その違いは一目で分かります。

 しかも、右田さんは高校を卒業した後、スーパーなどでの仕事を経て、ワーキングホリデーを利用してオーストラリアでのお寿司屋さんで修行を積んだ経験がありました。独特な臭みのあるサバを、現地の方に食べてもらうために様々な工夫を凝らし、酢で〆めていた経験も活かされ、エリートサバを使った 寿司は、さらにクセなく味わえると大評判となったのです。

 仕入れが困難なため、数は少なかったものの、居酒屋の人気メニューとなったサバ寿司。そんな時、奥さんの一言が、右田さんの運命を変えることになります。

「あなたが作る料理の中でサバ寿司が一番美味しい! このサバ寿司をもっと多くの人に食べてもらえたらいいのに」

 この言葉に右田さんの心が動きます。「同じ仕事をするなら楽しくやりたい。楽しくなかったらやめよう」。

 奥さんの言葉に背中を押され、いつかはサバ一本で百貨店に店を出すことを夢見ていた右田さんは、ある現実に直面します。

 それは、このエリートサバが「どこにも卸されていない」ことでした。

 「八戸のサバが全くないんです。どこの市場に問い合わせても『水揚げが多い時に、たまに入ってくるだけなので、次はいつ入ってくるか分からない』と言われたんです」と右田さん。

入手不可能なブランドサバを追い求めて

 

 希少価値の高いエリートサバが、大阪の市場に出回ることはほとんどありません。右田さんは、このサバを求め半年以上も市場を駆け回る日が続きましたが、見つけることができませんでした。

 エリートサバを仕入れることができないため、居酒屋では他のサバも使用しながらサバ寿司を売っていましたが、右田さんはあのサバを食べたときの感動を忘れることはできませんでした。

「なんとかして、最高級のサバを届けたい……」

 そこで右田社長は、いても立ってもいられず、直接現場の八戸に飛びました。

 名も知られていない小さなお店が、ブランドサバを直接仕入れるという無謀とも思える交渉に出たのです。

 「いかに私たちが、八戸のサバを愛しているかと伝えに行ったんです」と右田さん。

 当時のことをよく知る、八戸前沖さばブランド推進協議会の会長・武輪俊彦さんは、「よく憶えています。遠く大阪からわざわざ車で来られて八戸のサバに対する想いを熱く話してくれました。こんなに好きなら、きっとサバの良さを伝えてくれる信頼できる人だと思いました」と振り返ります。

 右田さん、熱いですね!

 「しかも、1回2回じゃなく、毎回来られるんですから! 八戸のサバを良いと思ってくれたのは、素直に嬉しかったです」

 いやいや、執念ともいえる情熱です。