【メソッド3】商品を売るのではなく(???)を売る

 我々は、開発過程を見聞きしたので、その値打ちも分かります。が! 問題は、開発の経緯も知らずに、初めてこの商品を見た方は2万5000円という値段をどう感じるか?です。

 この「バルミューダ ザ・トースター」の“新しさ”を消費者に伝えるにはどうしたらいいのか? 宣伝チームのリーダーに就いたのがクリエイティブ室室長の木下直子さんです。木下さんは語ります。「実際、高いですよね(笑)『たかがパンを焼く機械でしょ?』と言われればそれまで。私たちにとっては、『でも、その“たかが”で、こんなに美味しく焼けるんですよ!』ということをどうすれば伝えられるか? が課題だったんです」。木下さんは、これまでの製品パンフレットを引っ張り出し、あれこれ検討しましたが、どうもしっくりきませんでした。

 しかし、ある時、大胆なアイデアが浮かんだのです。何だと思います?

 思いもよらない、ある種「逆転の発想」ともいうべきアイデアでした。なんと!トースターのパンフレットの表紙を主役であるトースターそのものではなく、美味しそうな「パンの写真」にしたのです。一般的に家電製品のパンフレットって表紙を飾るのは商品そのものの写真ですよね。この商品はどんなデザインでどんな色でどんな質感か? それを、まずパンフレットの表紙で伝えるのが常套手段でした。

熱量のすごいものを作りなさい

 木下さんはこう話します。「寺尾社長からは『現実感のある美味しさを伝えなさい』と言われたんです。オシャレなものや見慣れないものではなく『熱量の凄いものを作りなさい』と」。確かにまだ見たことのないオシャレでスタイリッシュなトースターそのものよりも、美味しそうに焼き上がったトーストやパンの方が遥かに現実感があって熱量を感じます。

 
 

 さらに、パンフレットだけではなくポスターも「美味しいイメージ」を全面に打ち出すため、バルミューダ・ザ・トースターで焼ける様々なパンの調理例を並べ、熱量のあるものにしました。パンフレットやポスターの反応を木下さんはこう振り返ります。「バルミューダ ザ・トースターを『性能がいいんですよね』と言って褒める人は少なく『あれ使うと、おいしいんでしょ!』と噂されるようになったんです」。

 結果、発売と同時にバルミューダ・ザ・トースターは大ヒット!なんと10万台を越えるメガヒット商品となりました!

 また木下さんは、トースター開発で、会社として大きなものを得たと言います。

 「私たちは「モノ」を売るのではなく「体験」を売っているんだ!と。後から気づいたんですが、扇風機も「風」を売っているのではなく「涼しい体験」を売っていたんです。なので『この扇風機を買うと「いい風との暮らし」ができますよ』と、訴え方を切り替えたりしました」

 バルミューダは、モノを売るのではなく、素晴らしい体験を提供することで、これまでの家電メーカーとは違ったブランドイメージを築き上げたのです。

【メソッド3】商品を売るのではなく( 体験 )を売る

では、ここで「バルミューダ」の成功メソッドをまとめてみましょう。

【バルミューダの「心を動かす」メソッド】
【メソッド1】時代が必要とするものは( 高く )ても売れる
【メソッド2】( 感動 )の再現が新たなビジネスを生む
【メソッド3】商品を売るのではなく( 体験 )を売る