【メソッド2】(???)の再現が新たなビジネスを生む

 高くても本当に必要なものは買ってもらえる。そう確信したバルミューダは空気清浄機や暖房器具・加湿器など高品質な家電を次々と開発しました。
 そしてついに、これまでの常識を覆す、新商品が生まれるのです。

 若い頃、訪れたスペインのとある町で焼きたてのパンを食べ、あまりの美味しさにいたく感動した寺尾社長。それ以来、日本でトーストを食べる度に、スペインで食べた焼きたてのパンとの違いを残念に思っていました。いつか「あのパンのように美味しく焼けるトースターを作りたい!」そう寺尾社長は考えていたのでした。

この味を再現できるトースターを作るぞ

 そんな中、2014年5月のことでした。

 その日は会社の恒例行事であるバーベキュー大会。あいにくの雨模様の中、思い出になると思い決行されました。みんなが肉を焼く横で、社長の思いを聞いていたある社員が食パンを持参しました。それを炭火で焼き始めたのです。阿部さんはその時のことを明確に覚えていらっしゃいます。「いや、このパンが本当に美味しかったんです!みんなで食べている時、『この味を家電で再現できたら嬉しいよね!』という話になったんです」。

 すると寺尾社長はその場で、「この味を再現できるトースターを作るぞ!」と号令を発しました。即断即決ですね。

 そこで開発者として白羽の矢がたったのがクリエイティブ室企画デザイナーの松藤恭平さんでした。デザイナーというと、開発というより商品の形や色を考える仕事。しかし、寺尾社長は、松藤さんの常日頃の分析力と洞察力を見抜き、開発担当に抜擢しました。しかも松藤さんはその時、新入社員だったのです!松藤さん自身も「なんで僕が選ばれたのか全く分かりませんでした」と当時を振り返ります。

トースターを開発した松藤さん
 

 寺尾社長!もうここまでくると、我々には常識とかなんとか、もうどうでもよくなりました!

 早速、松藤さんは、バーベキュー当日の味を再現すべく、翌日から炭火でトーストを焼き始めました。もちろん、松藤さんもあのバーベキュー大会には参加しており、美味しかったパンを食べた1人です。しかし、火の強さや、炭の種類をいくら変えても、あの時の味が再現出来ないのです。「いろんな方に食べてもらって、あの時の味が再現できているかを試してもらったんですが、無理でした。どうして再現できないかずっと悩んでいましたねぇ~」と松藤さん。

 気が付けば、1000枚ものトーストを焼いていたそうです。正直、もうどの味がその味か分からなくなることもあったんじゃないでしょうか。困り果てた時、松藤さんは、ふとあることを思い出しました。バーベキュー大会は……あいにくの雨だった。「もしかすると、炭の火加減などではなく、雨がポイントだったのかも知れない」

 試しに食パンに水をかけて焼いてみると……格段に美味しくなったのです!コレは大きな手掛かりでした!

 そこで今度は火力、焼き方に加え「水分」も考慮することになりました。トースター内にどのように水分を与えるのか? 加湿器を突っ込んだり、霧吹きで水分を入れたり、様々な方法で効果的なスチームの方法を探ったのです。「適度な水分」「炭火のような焼き加減」。この2つの課題をクリアするために、5000枚ものトーストを焼いたのです。

適度な水分の加減を見つけるために5000枚のトーストを焼いた
 

 そして……ついに……理想の調理法が見つかったのです!

 それは、最初にトースターに5ccの水を入れるという、これまでになかった発想でした。この水で雨の日のバーベキューの味を再現。そして、トースターとしてはありえない、高性能のマイコンを内蔵し、1秒毎に温度を制御します。これでまるで炭火で焼いたようなトーストを電気の力で作ることに成功! 外はカリっと、中はふんわりとジューシーで香ばしいパンが焼ける理想のトーストが完成しました。プロジェクトスタートから、およそ1年。ついに「バルミューダ・ザ・トースター」、別名「感動のトースター」が誕生したのです。そのお値段、2万5000円!

【メソッド2】( 感動 )の再現が新たなビジネスを生む