そこで、お聞きします!「2万5000円のトースター」と聞いてどう思われますか?ぶっちゃけた話「高い」ですよね。でも「と~っても美味しいパンが焼けるんです!」と言われたらどうでしょう?

 今や「感動のトースター」と呼ばれ、10万台を超える大ヒットとなったこの商品を産んだのが、東京都・武蔵野市にあるバルミューダ株式会社。実は半数の社員さんが開発者で、他に営業、デザイン、企画など製造以外をほとんど自社でまかなっているんです。

 
【バルミューダ株式会社DATA】
・創業     2003年
・社員数    50人
・年商     約30億円(2015年)

 バルミューダは、2003年に代表取締役社長の寺尾玄さんが1人で立ち上げました。

 ものづくりの素人だった寺尾社長。当初は自宅近くの町工場で金属加工を学び、独学で図面を引いて勉強する日々でした。

 そのバルミューダが最初に発売したのが、「ノートパソコン用の冷却台」。約3万5000円という少し高い値段にもかかわらず3ヶ月で100台以上もの注文がありました。そして、2008年にはLEDデスクライトを発売!こちらも約8万円という値段でありながら月に数百台は売れるという人気ぶり。確かにデザインはオシャレ、さらに機能性も高い。とはいえ、ライトで8万円は少しお高い気はします。でもこれが売れたんですね~。

 バルミューダの滑り出しは順風満帆……に見えました。

 が! 2008年のリーマン・ショックで大不況となり、 商品がまったく売れなくなってしまいました。

 倒産寸前まで追い詰められたバルミューダ。

 しかし、ここから挑戦と奇跡の物語が展開するのです。

 いかにして感動のトースターが産まれ、メガヒットとなったのか。

 では、そのバルミューダの「おとなメソッド」を見ていきましょう。

【バルミューダの「心を動かす」メソッド】
【メソッド1】時代が必要とするモノは(???)ても売れる
【メソッド2】(???)の再現が新たなビジネスを生む
【メソッド3】商品を売るのではなく(???)を売る

【メソッド1】時代が必要とするものは(???)ても売れる

 起業から順調な滑り出しでしたがリーマン・ショックの影響を受けたバルミューダ。

 その頃のことを知る広報の阿部洋さんにお話を伺いました。

 「それまでは自分たちが好きなものを作っていました。結果的に作っていた商品はいわゆる『嗜好品』だったんです。嗜好品は経済活動が変動すると買ってくれなくなるんです」

だったら人類の課題を解決しよう

 そんな会社倒産の危機、窮地に追いこまれた社長は、悩んだ末にある考えに辿り着きました。それは、人類に課せられた「課題を解決すること」だと。

 寺尾社長曰く、「私たち人類には大きく2つの問題がある」と。1つは「地球温暖化問題」。もう1つは「エネルギー問題」だと。つまりは、「少ない電力」で「涼しさを提供する」モノが作れたら「人は絶対に買ってくれる!」と考えました。「今、エアコンをガンガン使っている時代ですが、石油が枯渇したらエアコンは使えなくなるんですよ。そこで、少ないエネルギーで涼しくなるものが作れたら皆さん絶対に買ってくださると考えたんです」。

 いや、寺尾さん!おっしゃる意味は分かりますが、その考えのスケールのサイズが凄すぎますよね?

 そしてバルミューダが開発に乗り出したのは、なんと「扇風機」でした。

 「環境問題」の解決の手段が「扇風機」!?確かにその通りです。ただ、ちょっと極端じゃないですか?正直な話、扇風機って風さえ出してくれれば良いわけで、必要な機能ってタイマーぐらいですよね?

 阿部さんも言います。「この世に『扇風機』が誕生しておよそ100年くらいらしいのですが、もう新しく開発する部分がなくて、大手メーカーさんは撤退モードだったんです」と。確かに、某社の「羽根のない扇風機」は画期的でしたが、まだ開発の余地はあったんでしょうか?

 これが、あったんです!

 皆さんも「扇風機の風に長時間当たっていると体が疲れてしまう」という経験、ありますよね?そこで、寺尾社長は、「自然のそよ風のような優しい風を送り出す扇風機があればきっと人は必要としてくれる」と考えました。そこで自然に近い風を作り上げるために、これまた独学で「流体力学」を猛勉強。試行錯誤を繰り返し、外側と内側の二重構造になった羽根を考案し、これまでになかった形状の扇風機を作りました。

 これによって「遅い風」と「速い風」が生まれ、2つの風がぶつかり合い1点に集中、その後拡散することでやわらかい風が生まれます。こうして、まるで自然界に吹くような風を作り出すことに成功しました。いや~凄いもんですね!

 理想の風はこれで解決できましたが、バルミューダの目指す「課題を解決する商品」にはまだ至っていませんでした。エネルギー問題や地球温暖化を克服するには、究極の「省エネ扇風機」を作る必要があったのです。

 いや、エアコンに比べれば扇風機はずいぶん省エネですよ!とは思いますが、社長の追求は止まりません。コストは跳ね上がりますが、高性能のモーターを使い既存の扇風機に比べて約30分の1の消費電力を実現しました。素晴らしいです!

 
高性能のモーターを取り付けた
 

この扇風機その名も「GreenFan Japan」。そのお値段……約3万8000円!もう1度言います。扇風機が約3万8000円!

……いや、ですから、今や扇風機は小さなものなら3000円も出せば買えますよ。あまりにも高価過ぎませんか?コレはさすがに売れないでしょ?と、思ったら、これが売れたんです!

 発売初年度、翌年度と予定していた台数を完売する大ヒットとなり「売り切れる扇風機」として話題にもなりました。こうしてバルミューダは倒産の危機を逃れたんです。

 確かに値段だけを見れば高い扇風機ですが、それ以上の価値が認められた結果なのでしょう。時代に本当に必要とされるものを突き詰めれば、認められることが身を持って証明されたのでした。

【メソッド1】時代が必要とするものは( 高く )ても売れる