上泉:中井社長は、若い従業員の皆さんに千房で働いていることのプライドや、千房はかっこいいお店なんだということを、社員にも伝えたいと思いながらお店を大きくしはった。

中井:大阪の千日前に千房が出たのが73年、今から44年前ですけれども、当時、お好み焼きでは企業にはならないな、と思っていました。私はオーナーです。社長です。私がお好み焼きにかかわることを恥ずかしい、かっこ悪いと思っていたら、そこで働く従業員はもっと恥ずかしい、もっとかっこ悪いと思うはずですよ。

 いくら募集しても従業員は来てくれなくて当然。千房は、企業にならないのは当たり前だ。でもそんなことは言っていられない。じゃあ、従業員は胸を張って、自信を持って働いてくれるようなかっこいいお店にしよう、かっこいい会社になろう。それが今の千房をつくってきたんですね。

中井社長の経営哲学に思わず唸る上泉雄一アナ

 だから昔よくいわれるように、好きこそ物の上手なれ、確かにそれもあるんですけれども、嫌いだから、いや、今は好きですよ。誤解のないように。今は好きですけれども、嫌いだからこそ好きになるように改革をしていく。ただ一気に改革はできません。大きく変わることを改革というんですが、よう大きく変わらないんだったらちょっとだけ変わる。これは改善というんですね。改善を続けていくうちに、これがやがては大きな改革につながっていった。

 ですから、千房には世界一、あるいは日本初というのはいっぱいあるんですね。最近であれば、お好み焼きが飛行機の機内食に登場しました。これは初めてですね。

上泉:ええ、LCC(格安航空会社)のピーチでスタートしたんでしたよね。

中井:飛行機の機内食に。あるいは、お好み焼きをディナーにしたのが、プレジデント千房ですね。あるいは、お好み焼き屋さんがデパートのレストラン街に登場している。これは千房が一番乗りでした。あるいはホテルのレストラン街に登場した。これも千房が最初ですね。

お金は使わなかったらたまる

上泉:結果、これだけのものに育て上げたということは、やっぱり中井さんに何かがあったからじゃないかなって改めて思うんですけれども。中井さんのお話からお金はどうやったらもうかるかってお話は、実は出てこないんですよね。すべては生き方や働き方についてのお考え方に尽きますもんね。

中井:私は中学を卒業してその年におやじが亡くなるんですね。そこで、「一人立ちをせなあかんと。そのとき小さくてもいいから、お店を持ちたいな、独立したい」て思ったときに、私の兄が言いました。

 「独立しようと思ったらお金をためなあかんな。お金をためるコツは簡単やねん」で、と。月給が月に3000円のときでした。そのときに「金をためるコツは簡単やねん。お金はな、収入の高い低いと違う。お金は使わんかったらたまるねん」。これは大笑いしました。そんなの誰でも知っているよと。

 そして、こんなことを言ったんですね。「ちりめんじゃこがあるやんか。ちりめんじゃこが手に入ったらすぐ食べるやんか。でも、そこは食べたらあかん。ちりめんじゃこを餌にしてサバを釣れと。

 サバを釣ったら1日は食えん。だから、食べたらあかん。サバを餌にして、マグロを釣れと。マグロを釣ったら1カ月食えるかもしれん。でも、もう1回辛抱せえ、マグロを餌にしてクジラを釣れと。クジラを釣ったら一生食える」。これは、ごっつい教訓になりました。今でも思います。金は使わんかったらたまる。

  そして、そのときにちょうどいい具合に、カーネギーの話を聞いたんですね。

上泉:アメリカのカーネギーですか?

中井:鉄鋼王の大金持ちです。このカーネギーが、こんなことを言っているんですね。「大金持ちになる資格は、ただ1つ。それは、貧乏人の家に生まれるこっちゃ」と言っているんです。本当は「こっちゃ」とは、言っていないでしょうが(笑)。

上泉:カーネギーがね(笑)。

中井:昔からよく言われるんですね。貧乏人の子供は、教育がいらん。何でかというたら、貧乏人の子供というのは、辛抱することを知っているんです。貧乏人の子供は、物を大切にすることを知っています。貧乏人の子供は人のありがたさ、物のありがたさ、感謝することを体で知っています。人間が伸びていく秘訣は、この3つです。

 日本人の美徳と言われる勤勉、努力、誠実、始末、こういうことが、若いときの私には全部あてはまったんですね。どれほど自信を持ったか。俺、金持ちになれるんや、金は使わんかったらたまるって。

上泉:そこで、自信をお持ちになった。