中井:「その中で企業としてやっておられるのは何社あるか知っているか」と。その当時わずか30ほどです。それほど難しいのです。ちなみに、今でも千房を入れて大手は約30しかありませんが、今は何と大阪のお好み焼き店は6000軒になりました。

 「お好み焼きをばかにしているんかもしれないけども、お好み焼きといえども経営だ。お前、ひょっとしたら経営を頭でしようと思っているのと違うか。経営を頭でするのは、その道に入ってから10年以上たってからだ。今お前がしなければならないのは体で学ぶことだ」

 強いけんまくで言われたもんですから、しょうことなしに。なんせ、私がお世話になった、技術を磨かせてもらった義兄の言葉でしたから。

上泉:義理のお兄さんなら、そりゃ、仕方ない。はい。で、いかがでしたですか、実際は?

中井:いやー、やっぱり難しいんですね、お好み焼き。だからいまだに恥ずかしい話ですけど、極められてないですね。

上泉:ええ! そうですか。

中井:お好み焼きは、メリケン粉ひとつでも大変です。つまり小麦粉ですね、去年から全部国産に替えたんですね。普通、市販されているのはたいがい外国産です。同じ小麦粉ですけど、外国産を国産に替えただけで味が変わる。

上泉:やっぱり。

中井:はい、全然違うんです。あるいは水でも変わるんですね。水も普通の水道の水を皆さんは飲んでおられますけれども、あれは軟水と硬水とあるんです。香水と違いますよ。硬水。

上泉:はい、ありがとうございます(笑)。

中井:さてお好み焼きにはどっちやねんという話なんですね。言ってみたらお好み焼きは軟水です。しかも超軟水です。これがどこにあったのかというと、鹿児島の地底にある温泉水です。やっと見つけて、今では全店その水を使っているんです。

 キャベツだってそうです。切れる包丁で切ったキャベツと切れない包丁で切ったのとは味が違うんです。食感が違うんです。

上泉:やっぱり切れる方で切った方が。

中井:間違いなく。どうせ焼くんじゃないかと、型は崩れるじゃないかと思うんですが、食感が違うんです。それから、腹立ち紛れに混ぜたのと丁寧に混ぜたのと、これもまた味が違うんです。

コックだから気づいた奥の深さ

上泉:何かそれは違うような気が若干はするんですけど(苦笑)。やっぱり全然違いますか。

中井:違います。とか、それから、皆さん、ちょっとした秘訣ですけれども、お好み焼きを作るときだしを入れるといいますね。メリケン粉にみりんを入れたり、塩やら何やかんや入れますけれども、混ぜてから1時間以上寝かすんです。寝かすのと寝かさないのと全然。

上泉:それで、味が違いますか?

中井:メリケン粉臭さがみんな飛ぶし、ふわっと仕上がるんですね。私どもの場合、2時間ぐらい寝かせているんです。発酵するんですね。それで要するにお好み焼きがふわっと出来上がる。

 要するに、最近はどこで作ろうともお好み焼きはいい材料で作られているんですね。ところが配合によって味が変わる。だから配合を言ってしまうと、千房の味になってしまう。

上泉:これは企業秘密ですからね。

中井:まあ、秘密というような大層なもんじゃないですけどね、それぞれ家の味があります。それでいいと思います。

 私は元々コックをやっていたもんですから、どうしたら味がよくなるのか分かってきたんですね。おじいちゃんとおばあちゃんがやっておられた味があるんです。ベースがあるんですけど、より一層おいしくしたいという思いの中で、興味関心を持ってやっていくうちに、お好み焼きってすごいやっちゃなということに気付くんですね。

上泉:今でもまだ極めていらっしゃらないというのは、そういう奥深さで。

中井:そうです。