上泉:小さな会社が努力して逆転するケースもあれば、例えばスーパーホテルのように飽和市場の中で利益とお客さんの満足をともに高めていくという戦略もありますね。

小宮:そうそう。よくQPSって言うでしょ。QはQuality、PはPrice、SはServiceの頭文字でね。この場合はクオリティーはそこそこ維持したまま、価格を下げたからお客さまが来たわけです。つまりQPSの組み合わせをどう変えられるかがとても大事なんです。

上泉:今までだったら、質を上げると値段も上がってましたよね。

小宮:そこは経営の腕でね。他のホテルのことをどれだけ知ってるかもあるし、自分でできると信じてやり切ることも必要です。

上泉:スーパーホテルの工夫としては、鍵を使用せず暗証番号で部屋に入れるとかチェックインの機能をほんの少し簡略化することで、すごい経費削減につながっているんですよね。

小宮:ベッドの脚をなくしてしまうと掃除の手間が全然違ってくるとかね。1部屋1日何十円でも部屋の総数をかけ算して年間ではけっこうな額になるでしょ。たいしたもんやね。

上泉:その細かい積み重ねで浮いた分がお客さんに還元されるんですよね。

小宮:そうそう。それは昔から日本人が得意とするところで、例えば吉野家は歩く歩数まで計算して店舗を設計してるんです。スタッフのオペレーションがスムーズになるよう一歩でも減らせるように冷蔵庫の設置場所とかまでね。

上泉:会社を経営するって、そこまで気が回らないとだめなんでしょうか? それとも後で気付いていくものなんでしょうか?

小宮:両方でしょうね。気付かないといけないけど、やらないと分かんないこともいっぱいあるんでね。あのスーパーホテルも最初の頃より今の方が効率は上がってるはずです。やってみて難しくてもやりとげてノウハウを身に付けるんです。

結局は知恵がどれだけ出せるか

小宮:老舗であろうが、新興企業であろうが、成功するには、結局のところどれだけ知恵が出せるかということなんですよ。

上泉:復活した会社でも共通しますよね。最後は知恵でというのが大きいですね。

小宮:知恵とね、それからねばり。だからセミナーでもよくこう話します。ビジネスで必要なのは思考力、実行力と。考えて考え抜いて作戦立てて、それを今度はとことんやりとげる力がいる。

上泉:どんなに大きい会社でも今は先行きが分からない時代になってますし。

小宮:大きいからこそ分からないのかもしれない。会社って船みたいなものやから。大きいと簡単に舵が切れない。小さい会社の方が簡単に舵を切れるでしょ。

上泉:チャレンジ精神って昔から大阪人にはあるんでしょうね。どこかで「東京には負けられへん」と思ってる。

小宮:それある。坂田三吉やね(笑)。

上泉:でも、大きくなったら本社が東京に行ってしまいますね。

小宮:寂しいけどね。関西の企業が東京に行きすぎてるよね。もう少し大阪で頑張ればいいのにね。

上泉:成功した会社が東京に行き、そこから世界へというのも嬉しいですけどね。

小宮:仕方ない部分もあるけど、関西のアイデンティティーを失わないでほしいよね。

上泉:お客さんにガッチリ喜んでもらうというのは、他の地域以上に思いがあるんでしょうね。

小宮:それはね、昔から競争が激しかったから。お客さんに喜んでもらえないと勝ち残れない、生き残れないっていうのがあったと思うんです。そして明治以降は、国からのお金が出て国主導でやってきた東京のやり方に対し、ちょっとでも安く良いものをというのがナニワの商売の原則になったんやね。

上泉:そう思うと、関西の企業の頑張ってる力みたいなものが見えてきます。

小宮:これからも頑張ってほしいね。

(この記事は書籍『儲かりまっか? の経営道』を再編集しました。構成:西村美鈴、編集:日経トップリーダー、上泉アナウンサーが司会を務めるテレビ番組「~オトナ度ちょい増しTV~おとな会」についてはこちらをご覧ください)

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