小宮:そう。でもこれはこのままやっていても先行きがないと感じられるかどうかっていうこと。ゆでガエル理論の話はよくしますよね。ゆでガエルになってしまう前に、このままじゃダメだから飛び出した方がいいと考えられるかどうかが大きいところだと思います。

上泉:先代が大きくしたものを継ぐ2代目や3代目ならではの苦しみもありませんか?

小宮:関西の企業、とりわけ中でも伝統といえば京都があると思うんやけど、続いてきたものをどこでやめたらいいかというのは難しいところやね。

上泉:でしょうね。

小宮:何をやめていいのか、どこまでやめていいのかというのは難しい。

上泉:そういうときは何で判断するんでしょうか?

小宮:もし僕がその会社のコンサルタントだとしたら、お客さんの立場で、お客さんの目から見なさいと話します。そうしないと自分たちでいくら固執したって市場がないものは勝てないわけですよ。ピーター・ドラッカーも言ってるけど、「目的」と「市場」と「強み」ね。つまり自分たちの志は何かということ。そして市場があるかどうか、喜んでもらえるお客さんがいるかどうか、そこに強みが生かせるかどうかだから。市場がなくなったらね、いくら昔のままやってますと言ったって、それはジリ貧にならざるを得ませんよね。

上泉:先祖代々続けてきたものをいくらマーケットの先細りが見えてるからと言っても、やめるのには躊躇してしまうと思うんですけど。

小宮:うーん。これ以外はやったらあかんとかいう家訓でもあったら別やけどね。そうでなければ会社を潰してしまうわけですから。繰り返し言いますけど、市場がないところに固執してはいけないと僕は思いますね。だってお客さまに喜んでもらうことが企業にとって一番大事なことなんですから。非常に厳しい言い方やけど、価値のなくなった企業は消えてしまうんですよ。失われた価値を守り通すなんてことは経営者として意味がないでしょう。

成功する人には執念がある

上泉:ところで、嵯峨野の観光鉄道ってありましたね。

小宮:ああ、あの手作りのね。

上泉:そう、あの廃線跡となってたところをJRのエリートコースを歩んできた方が配属になって任されてね。見事に復活させました。

小宮:成功する人は執念があるんですよ。まず市場があるということは大前提、市場を掘り起こせるというのも大前提だけど、それを信じてやり続けられるかどうかということ。結果が出るまでやる。あきらめない。ここやね。

上泉:そうですね。しかも初めは少ない社員とともに社長自らが手作りで線路を整備していくという。今、考えるとすごい執念だったんだろうと思うんですよね。

小宮:ドラッカーが言うところの「目的」じゃないけど、何のためにやってるのかが明確だった。それを裏打ちする「志」は、復活させようという気持ちだったんやと思いますけどね。

上泉:復活させるだけじゃなくて、例えば看板を立てれば目先の広告収入が入るであろうところを、あえて景観を守って断ったんですよね。

小宮:そう、利益が最優先じゃない。やるべきことは何なのかをきちんと分かってるんやね。金儲けに先走ると大切なコンセプトが崩れるってこともね。

上泉:小さくてもキラリと光る会社があって、どんな小さな会社でも存在意義があるということですね。ほんまに、僕は勇気づけられますわ。

小宮:そう、ある。お客さんがいる限りは存在意義がある。逆にその意義があるように努力していかないと、企業は存続していけないということですよね。