繁盛する1号店を切り盛りする中で、不動産業者から十三の120坪の物件の話を持ちかけられた。しかし、開店には2500万円ほどの資金が必要だった。当時の預金は250万円で、保証金にも満たない。取引のあった都市銀行に融資の依頼に行ったが、窓口で断られ融資担当者に会うことすらできない。

 がっかりした小嶋会長だが、「都市銀行だから無理なのだ。大阪で一番小さな信用金庫に依頼しよう」と出かけていく。すると、たまたま、その信用金庫の非常勤理事ががんこ寿司のお客様だったという。「がんこ寿司はいい商売をしている」と後押ししてくれ、一気に融資の話が進んだ。

諦めなかったら何とかなる

小嶋:諦めなかったら何とかなるということなんですね。しかし、その融資だけでは資金は足りません。家主さんのところに通って、「保証金の支払いを5年待ってほしい」とお願いしました。見ず知らずの人が来て、お金を持っているならまだしも、お金がないから5年待ってくれと言う。そんな人に一等地の物件を貸すわけがないですよね。それでも諦めずに5回、7回と通っているうちに話を聞いてくれるようになったんです。待ってもらう間、銀行に預けた金利の倍の金額を支払うという条件で貸してもらえることになりました。

 物件が決まったら次は内装です。とにかく値切って値切って、業者にこの次にお店を出すときは必ず、おたくが提示する金額で依頼するからと頼み込んで、かなり安い金額で受けてもらった。やりようはあるということです。

上泉:よくそこまで……。

小嶋:とにかく一生懸命でしょう。一歩も後に引けないですから。引けば倒産しかねない。必死さがお客さんにも伝わったのではないかと思います。

 ただ、事件がありましてね。当時は派遣会社のようなところから職人に来てもらっていたんです。すると、派遣元の責任者と私とどっちが親方か分からなくなりました。それで正規で雇うから、うちか派遣元かどちらかを選んでほしいと職人に伝えましたところ、全員が派遣元の方をとりまして職人がゼロに(笑)。仕方なく、新人と私で店を回していたんです。

上泉:ええ! よくお店を回せましたね?

小嶋:こんな状況でもお客さんが来てくれる。そう思ったら、ありがたくてネタがどんどん大きくなるんです。でもそれでお客さんが喜んで来てくれるようになったので、結果的には良かったですね。不可能と思ってしまったら不可能のままですが、何としてでもやると決めたら、95%不可能でも、それを95%の可能性に変えることができると学びました。

 でも不思議なもので、「もうあかん」と思ったときに、お客さんが来てくれるんですね。直前が一番苦しいんです。そこで止めてしまったら、終わってしまう。もう一時踏みとどまったら、次に一歩進める。この一歩の違いが、成功、不成功を決めるのだと思います。不思議なもので、何度もそういうことを経験しましたよ。

   

(この記事は書籍『儲かりまっか? の経営道』を再編集しました。構成:尾越まり恵、編集:日経トップリーダー、上泉アナウンサーが司会を務めるテレビ番組「~オトナ度ちょい増しTV~おとな会」についてはこちらをご覧ください)

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