中尾さんは「手ぬぐいは、ほとんどが企業の贈り物や贈答品ばかりで、時代遅れだったんです」と語ります。しかし、実際には手ぬぐい人気は広がっています。
 何とかして手ぬぐいの可能性を追求し、ブランド化に成功した「おとなメソッド」をひも解いていきましょう。

【ナカニ『超変革』の成功メソッド】
【メソッド1】生産効率よりも(???)が品質向上に繋がった
【メソッド2】(???)をオリジナリティーとして商品化
【メソッド3】様々な(???)を提案し裾野を広げる
【メソッド4】作り手と使い手が(???)を共有する場を設けた

 では、まずメソッド1から。

【メソッド1】生産効率よりも(???)が品質向上に繋がった

 そもそも、あまり聞きなれない「注染」という技法。従来の方法とは違い、一度に多くの生地を染めることができるのが大きな特徴です。生産性が高く、大量生産に向いているこの技法。完成までに4つの工程を経て、肌触りも柔らかく、色使いも特徴的な手ぬぐいができ上がります。

注染の工程。一度に多くの生地を染めることができるようになった
注染の工程。一度に多くの生地を染めることができるようになった

 ナカニは、1度に25枚分の手ぬぐいを染めることができるこの4つの工程をそれぞれの職人による分業制にすることで生産効率を大幅にアップさせました。
 しかし、2代目社長となった中尾さんはこの分業制に違和感を覚えました。
「採算を合わせるなら効率の良い分業制なんでしょうが、「ものづくり」をしているという気概やプライドがだんだんなくなってきたんです。職人が育たなくなってきました。『やらされてる』感があったんですかね」と23年前の社長就任当時を振り返ります。

 そこで、なんと分業制をやめて1人の職人が全工程を行う一貫制へと思い切って「超変革」しました。すると、一人ひとりの意識が高まり、これが品質の向上へと繋がったのです!
 確かに「生産効率」という言葉は不思議な力を持っています。会社ではコレを追求することを求められ、会議などでもこの言葉を出されれば「水戸黄門の印籠」のごとくひれ伏すしかない「キラーワード」といっても過言ではありません。
 しかし、中尾さんは「職人としての誇り」を優先させ、結果を出しました。
 「モノを作っている人って、成果を求めるんです。自分が作っているんだから、モノを作っている姿勢も含めて技術に対して評価してもらいたいんですよ」と経営者であり職人でもある力強い眼差しで中尾さんは語ります。

【メソッド1】生産効率よりも( 職人育成 )が品質向上に繋がった

 続いて、メソッド2です。

【メソッド2】(???)をオリジナリティーとして商品化

 さらに中尾さんの「超変革」は進みます。

タブーに挑戦、にじみを生かす

 挑戦したのは従来なら「タブー」とされてきた色の「にじみ」でした。染色する際には色と色が混ざらないようにするのがこれまでの注染技法の常識でした。「本来、注染はいい滲みができる手法なんですから、あえていいにじみを作りたいんです」と中尾さん。「いいにじみ」を作ることで生まれたグラデーションが従来になかった「柔らかな風合い」を出し、デザインの幅が広がりました。東京駅や北陸新幹線とコラボレーションした手ぬぐいは、このにじみが生かされた斬新なデザインで話題となりました。

にじみをいかしたコラボレーション手ぬぐい
にじみをいかしたコラボレーション手ぬぐい

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