上泉:1店舗目が成功して、そこからお店をどうしていくか、いろいろなご決断があったと思いますが。

大倉:最初から全国チェーンを目指して創業しましたので、次にどう2店舗目を出すかということしか頭になかったですね。

上泉:当初、具体的な店舗数の目標があったんですか?

大倉:当時勢いのあった居酒屋が500店舗くらいでしたので、そこはイメージしていました。そのときの自分にとっては、夢と目標の中間くらいの数字だったでしょうね。

大阪だけじゃない。目指すは全国

 全国展開するための店づくりを続けてきた鳥貴族。大倉社長は「大阪の企業というイメージがつく前に早く関東をおさえたい」と考えていた。大阪で40店舗を超えたタイミングで関東に進出。現在では関東の店舗数が関西を超えている。

上泉:全国展開できるという手応えを感じられるようになるのは、どれくらいになってからですか?

大倉:大阪の道頓堀店が成功したときに自信が生まれました。それまでは家賃の安いローカルな地域にしか出せず、店舗展開も非常にゆっくりでした。それが道頓堀という、大阪でも指折りの繁華街で、しかも空中階(=2階より上の階)で成功したんです。空中階は1階よりも家賃が安いですから、出店の可能性が広がりました。

焼鳥の味を磨くことにとにかく集中

 鳥貴族の成功の裏には、いくつかの経営メソッドがある。
 お通しを出さない、現在FC(フランチャイズ)展開できるのは鳥貴族のOB・OGのみ。そして、これだけ多店舗展開していながら、セントラルキッチン(1カ所で調理し、各店舗へ配送する)の仕組みを導入しないことだ。セントラルキッチンにすればコストを削減でき、利益は上がるかもしれない。しかし、在庫を抱え、冷凍保存が必要になる可能性もあり、鶏肉の新鮮さは失われる。そうすると、品質は落ちるだろう。お客様に美味しいものを提供できない制度は導入しないのが、大倉社長の方針だ。

大倉:多店舗展開を目指す中で、世の中では効率を追求するあまり、美味しさをないがしろにする傾向が目立ち、チェーンストアが否定されるような風潮が出ていたんです。お客様は手作り感を求めていると感じたので、店舗で串打ちして、個人店を展開するような形にすれば、チェーンストアの負のイメージを払拭できるのではないかと考えました。また、鶏肉は肉類の中で最も劣化が早いんです。包丁で切って串打ちすると、劣化のスピードが上がります。お客様の口に入れる少しでも手前で串打ちする方が、美味しいものを提供できます。

上泉:そこまで徹底して品質にこだわるのは、やはりお客様のことを考えてのことなんでしょうか?

大倉:もちろん、ひとつはお客様のことを考えてですが、もうひとつは、社員が自分の商品に誇りを持てるためです。社員が自分の店の商品に自信を持てないことほど不幸なことはありませんから。社員が「うちは低価格だけれども、焼鳥は本物だ」と思いながら商売できることが大事だと思っています。

上泉:いや~、確かに美味しいですもんね。でも、メニューは他店と比べると絞り込んでますよね。

大倉:創業時はもっと少なかったのですが、だんだん増えていきました。店をやっていると、メニューを増やせば増やすほどお客様が来てくれると思いがちなんです。実は一時は95品くらいまで増えたこともあるのですが、「あれ、これは焼鳥屋ではなくなったな」と思ったんです。さらに、品数が増えると、焼鳥の出る数が減ります。これではダメだと考えて、品数を思い切り減らしました。これも勇気のいる決断でした。

次ページ 最大のサービスは全品を280円で売り続けること