【メソッド4】新入生を(???)の気持ちで迎え入れる

 そして2014年から始まったのは、近畿大学OB・つんく♂さんプロデュースの入学式です。
 ステージでは在学生28人によって結成されたユニット「KINDAI GIRLS」の歌とダンスで新入生を歓迎し、さながらコンサート会場のようなド派手な入学式です。  

在校生28人によって結成されたKINDAI GIRLS
在校生28人によって結成されたKINDAI GIRLS
 

 「よその大学からやネット上でもこの入学式に対して批判はあります。じゃあ、おたくはどのような入学式をやってらっしゃるんですか?お聞きしたいんです」さらに世耕さんは続けます。「うちには不本意で入学してきている学生もいます。志望校ではなかった学生の意識を入学式で変えたいんです。そのためには入学式はとっても大切なイベントなんです」。

この大学に入って良かったと思われたい

 第一志望ではなかった「不本意入学者」はモチベーションが上がらず大学を中退することも。中退者が増えれば授業料収入の減少にもつながり大学経営も痛手となります。世耕さんは「この大学に入ってよかった!と思える入学式にしたいんです」と入学式の半年以上前からすでに準備を始めています。

 入学式でパフォーマンスを演じたKINDAI GIRLSのメンバー、宮川陽香さんは「私も広島から1人でやってきて寂しく心細い思いをしました。でも入学式で気持ちが変りました。今度は私が新入生の背中を押してあげたいんです」。決してプロではない彼女ら在学生の全力のパフォーマンスが新入生に前を向いてもらう素晴らしいきっかけとなっています。
 総合社会学部の川畑友理恵さんは「私の第1志望は関西学院大学だったんです(笑)。でも入学式に来てこの大学に入ってよかったと思いました!」と。
 筆者はこのコメントを聞いた後、なんだか涙がこぼれてきました。
 何でしょうか? この気持ちは……。

 思えば、学校や会社、どんな集団においても「第一志望」ではない「不本意な結果」になることは、生きていく中で皆が少なからず経験することです。まして受験というシステムの中では「なぜもっと……」「どうして……」という自問自答のなかで、その結果を消化できず受け入れられない学生がいるのは紛れもない事実です。
 そんな時に「置かれた場所で咲く」ためのサポートを「入学式」という最もインパクトのあるタイミングに設定したのは、なかなか打ち壊すことのできない大学の序列に苦しんできた近大だからこそできた決断なのかもしれません。

 新入生獲得のアプローチはこれだけではありません。
 高校生対象のオープンキャンパス(学校内覧会)で、より近大を知ってもらおうと行っている取り組みがあります。
 2015年7月に行われたオープンキャンパスは、なんと1日1万人以上が来場する盛況ぶりで、学校案内はもちろん「近大マグロ」の試食など、近大を知ってもらうためのイベントがいろいろおこなわれていますが、なかでも目に付くのがピンクのTシャツを身にまとった「近大オールスターズ」メンバーです。彼ら彼女らは、全員在学生のボランティア。マンツーマンで学内を案内します。訪れた高校生にとってもマンツーマンだからこそ在学生のナマの声が聞け、ますます近大に対する愛着と憧れを持てる!と、大好評なのです。
 これが志願者数増加にも繋がっています。受験勉強のときに学校を見に行くことでまたモチベーションがあがりますが、先輩のナマの声ほどやる気を上げてくれるものはないですよね。

【メソッド4】新入生を( おもてなし )の気持ちで迎え入れる

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