【メソッド4】(???)は設けず 自然の景観を守った
「嵯峨野トロッコ列車」は、この素晴らしい景観をもっと楽しんでいただこうと、他の電鉄会社にはないサービスを行っています。一体、何だと思います……?
実は、保津峡に差し掛かる一番景色のいいところで列車を止めて景色をたっぷり楽しんでもらうんです。お客様は皆さん写真を撮ったり景色にただただ見とれていたり。観光列車ならではの楽しみ方ですよね!みなさん運行中の列車が止まる非日常を楽しんでいます。コレも「オンリーワン」を目指した長谷川さんならではの素敵なアイディアですね。
今回の放送を通じて、長谷川さんの行動や考え方は勉強させていただくことばかりでしたが、なかでも一番驚き、また私自身「かくありたい!」と、思わされたことがありました。それは、「広告看板を設けず、景観を守り通したこと」です。
1000万円の広告を断って守ったもの
「500万円、1000万で広告看板を!という話は確かにあったんです。でも『ありがとうございます!』と言って全部断りました」(長谷川さん)
線路を整備し、駅舎を建て残ったわずかの資金で中古の貨物列車を購入し、おそらく喉から手が出るほど欲しいはずだった広告料。それを断腸の思いで断った長谷川さん。3年しか持たないなら何か証を残したい。1、2年の延命の為の目先のお金に頼ることなく、この苦境を乗り越えた先にある大きな財産になるであろう嵯峨野観光鉄道を支えるかけがえのない景観の保全を選択したのかもしれません。

しかし、自然の景観を守るということはリスクも伴います。長谷川前社長の後を受けた現社長の西田哲郎さんはこう言います。
「もともとは災害対策も兼ねてトンネルを堀り、直線ルートを通しました。うちは小さな組織ですから、自分で見られるところはきちんと見て皆さんに安全に観光列車を楽しんでいただきます」と、西田さんも先頭に立ち連日、落石や倒木のチェックに余念がありません。
さらに、「通勤や通学の為ではではなく、観光列車ですから。片道25分の観光の旅を楽しんでいただき、また来たい!と思っていただけるようにしていきたいですね。長谷川さんの積み重ねてきたものに、さらに自分なりの工夫を加えてさらにサービスを発展させたいと思っています」と、その熱い想いも引き継がれているのです。
【メソッド4】( 広告の看板 )は設けず 自然の景観を守った
長谷川さんを始め9人でスタートした嵯峨野観光鉄道は、当初23万人の乗客数を予想していました。しかし1991年の開業年には69万人と予想の3倍のお客様がトロッコ列車での観光を楽しみました。そして2015年度には乗客数123万人、年商10億円(2016年3月24日現在)を売り上げる、JR西日本ナンバーワンの子会社に成長しました。オンリーワンを目指していた会社は、結果、ナンバーワンも勝ち得たのです。
【メソッド2】(乗り心地)の悪さが非日常の世界に調和
【メソッド3】地域住民と(植えた木々)が路線の名所に
【メソッド4】(広告の看板)は設けず 自然の景観を守った
毎回番組では、取材の最後に、経営者に企業理念や経営哲学を端的に語ってもらい、「おとなフィロソフィ」と名づけて紹介しています。長谷川さんに聞いた、嵯峨野観光鉄道を支える哲学「おとなフィロソフィ」は、こんな言葉でした。
「小さくてもキラリと光る会社であること。お客様に気持ちよく帰っていただける観光列車。それを常に考えていれば、20年、30年と会社は続いて行くと思います」
そう語る長谷川さんの瞳の奥がキラリと輝いていました。
私たちも深夜の小さな番組です。でもご覧いただいた皆様に、また見たい!と思っていただければ、という思いを常に持ち続けてスタッフ一同番組に臨んでいます。「山椒は小粒でピリリと辛い」という言葉のように気概を持って、常にお客様のことを思いながら、深夜にキラリと輝く星になりたい!との思いを改めて強く感じた筆者でした。
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