その後、若狭塗りの特徴でもある貝をつける作業へと移り、さらに今度は色のついた漆を塗り重ねていきます。そうして赤や黄色、緑、金など様々な色を何度も何度も重ねて塗り込んでいき、最終的に専用の石で研ぐと、色鮮やかで艶やかな漆の層を重ねた若狭塗り箸が完成します。
 この工程と手間を考えれば、このお値段はむしろ安いといっていいのかもしれません。
 ちなみに兵左衛門には2年半の歳月をかけて作られた若狭塗りの箸で、お値段54万円なるものもあります。ご、ご、54万円となるとですね……いくら手間隙かかっていたとしても決して「お安い」とは言えませんが、2年半の歳月をかけたお箸があるなんて! という驚きと同時に、どんな手触りで、どんな食感なのか1度使ってみたいものです。

【メソッド1】箸は( 食べ物 )です 100%天然漆を使用

2年半かけて作る若狭塗りの箸
2年半かけて作る若狭塗りの箸

【メソッド2】箸を(???)することで使う人に愛着を

 浦谷会長には箸作りに対する信念が、もう1つあります。
 ものづくりを担う者として、どこの会社も作っていない箸を作り、多くの人に箸に愛着を持ってもらいたい、ということです。
「二番煎じになるのが嫌いなんです」と、きっぱりお話される思いから、兵左衛門は、東京・広尾に直営店「にほんぼう」という箸の専門店を開設して独自で開発した箸を販売しています。
 例えば、どんな人の指や持ち方にもフィットするようにと計算されて作られた持ち手にいくつものくぼみをつけた人気商品の「けずり箸」。また、1人でも多くの人に自分の箸を持ち歩いてもらいたいと作られたのが携帯用のお箸「八四郎」。箸が半分に分割されていて、つなぎ合わせて使いますが、もちろんこの箸も下塗りから仕上げまでしっかり天然漆が使われています。麺類専用箸は、麺に合わせて細分化されています。麺が太いうどんは、つかみやすいように切れ込みを入れ星型に、ラーメンは箸先に溝を入れ、スープとからみやすく、油の多いパスタには麺がすべらないように箸先をねじるなど用途別のお箸も考案しました。

星型に切れ込みをいれたうどん用の箸
星型に切れ込みをいれたうどん用の箸

 店内でその日のうちに名前を彫ってくれるのも人気の秘密。大切な方や、職場の仲間のお祝いでちょっと良いお箸を名前入りでプレゼントするって、オトナな感じがしますよね!

修理だって承ります!

 さらに、兵左衛門では少しでも多くの人に愛着を持って欲しい! と、箸を修理しており、多い時だと全国から月に100膳以上の箸が送られてくるそうです。箸を修理までしている会社はそう多くありませんよね。
 送られてくる箸は、箸先が折れてしまったものや使い込んで色が剥げ落ちてきたものなど修理の内容は様々。その傷んだ箸に、削り直しに加え、漆の塗り直しも最低5回行います。世界に1膳しかない、大切な箸だけに失敗は許されません。
 一方で、修理代金を考えると、買い直した方が早いのでは? と思うかもしれませんが、プレゼントでもらったものや、自分の手に馴染んだものなど同じ箸をいつまでも使いたいという人も多いそうです。実際に、修理された箸が手元に戻ってきたお客様からは、続々と感謝の手紙が送られてきます。この手紙に浦谷さんは「日本人の箸に対するDNAっていうんでしょうか? そこまでの思い入れがこちらも嬉しいんです」と、しみじみお話になります。
 修理してでも使いたい、と思える箸に出合えることもまた嬉しいですよね。

【メソッド2】箸を( 修理 )することで使う人に愛着を

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