さらに、自分の採油機があるからこそ、できるサービスを始めたのが高尾農園です。こちらの農園では、絞りたてのオリーブオイルを、採油場に来たお客さん限定で販売しているんです。「しぼりたて」のオリーブオイルなんて、現地でないと買えませんもんね。お客様にも喜んでいただき、島に来られることで別の消費も生み出しました。

 こうして、小豆島産オリーブオイルは需要を伸ばし生産量も回復。小型採油機導入で、各社が切磋琢磨する状況が生まれ、これが全体の質を向上させることに導きました。柴田さんの見つけた「小さな」採油機が「大きな」仕事をしたのです。

【メソッド2】( 小型採油機 )の導入で農家が切磋琢磨

 続いてメソッド3を見てみましょう。

【メソッド3】(???)を取り入れ世界で認められるオイルに

 小豆島の挑戦は止まりません。

 小豆オリーブ研究所で、生産者のサポートをする柴田さんは、品質への意識をより高めてもらおうと、海外では当たり前に行われている人間の感覚(味覚や臭覚など)を用いて評価する、官能評価を取り入れました。

「国際基準と同じ基準にあわせて『香川オリーブオイル品質表示制度』という独自の制度を作ったんです」

 海外では、オリーブオイルテイスターによる官能評価と、化学分析の両方に合格したものだけを「エクストラバージン」と呼んでいます。そこで、スペインから講師を招き、小豆島の生産者も「エクストラバージン」が持つ、辛味や苦味を評価できるよう指導してもらいました。

「まず自分たちで味をみて、この時期に搾るとこんな味になるんだ、と各社が同じ評価方法で自社のオイルの品質を判断できるようになったんです」

世界水準の官能検査を実施
世界水準の官能検査を実施

 これだけではありません。さらに香川県独自の、国際基準より厳しい「プレミアム基準」を設け、合格したものには、プレミアムシールが貼られています。

 もちろん、香川県の職員が抜き打ち購入し、研究所のスタッフが検査をして常に基準を満たしているかチェックもしています。

世界水準を目指して検査もしっかり

 こうした取り組みも後押しし、小豆島のオリーブオイルは、海外の品評会で十分に戦える、世界も認めるオイルになったのです。空井農園の空井さん夫婦は、柴田さんから品評会に出品するには、ブランド名がいるとアドバイスを受け、ご夫婦で考えたのが「小豆島の農家が作ったオリーブ油」というブランド名。

 これで出品したところ、見事、ロサンゼルスの品評会で、金賞を受賞しました。

 国際基準である官能評価を取り入れ、小豆島の小さな生産者の作ったオリーブオイルは、世界のオイルに成長したのです。

 また、こんなオリーブオイルもあります。

 名前は「自社農園栽培オリーブ油」。プレミアムシールが輝き、4年連続で香川県知事賞も受賞している、すごいオイルなんですが、こちらの製造元、実は醤油メーカー。創業から80年、原材料にこだわった醤油作りで、信頼を築いてきたヤマヒサです。醤油もオリーブオイルも手作りで品質にこだわるヤマヒサは、減農薬で育てたオリーブの熟した実をしぼる完熟オリーブオイルを作りました。またこんな取り組みにも挑戦しています。海外に比べオリーブ畑の規模が小さく、限られた素材を全部使いたい、と始めたのが、オリーブの葉を粉にしたオリーブ茶の製造です。ポリフェノールが豊富で、土産物としても人気だそうです。

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