小豆島でも効率化のため専用車の導入を考えたそうですが、生産者の選択はやはり「手摘み」でした。というのも、小豆島の畑は、海外に比べ面積が小さく、また斜面にあるものも多く、大型の車では畑に入りづらいそうなんです。

 そして、何よりも「品質」。手で摘みながら丁寧に選別した方が、美味しいオイルになることを改めて実感したそうです。「斜面が多く機械が入らない」というデメリットを「手摘みで丁寧な選別ができる」というメリットに変え、小豆島の生産者は、高品質なオリーブオイル作りに特化しました。

【メソッド1】( 手摘み )による丁寧な選別で高品質を実現

 続いて、メソッド2をご覧ください。

【メソッド2】(???)の導入で農家が切磋琢磨

 オリーブの実は、収穫した瞬間から酸化が始まるので、少しでも早く絞った方が高品質なオイルになります。そう、オリーブオイル作りは「時間との戦い」でもあるのです。

 小豆島産のオリーブ油は、収穫後72時間以内にしぼると決めていますが、東洋オリーブでは、さらに厳しく収穫後4時間以内に搾ることに決めました。

 実は、こうして取った実をすぐに搾れるのは、柴田さんが見つけてきた「小型採油機」のおかげなんです。

 以前は、小豆島には大型の採油機が、たった1台あるだけでした。

 複数の生産者が作ったオリーブを集め、その1台の採油機で一緒に絞っていたのです。柴田さんは言います。「小型の採油機が入るまでは、色んな生産者の方が努力して作ってこられた果実が、最後はひとまとめになって搾られていたんです」。どれほど丹精を込めて育てたオリーブでも最後はひとまとめとなると、生産者のモチベーションは上がりませんよね。柴田さんが見つけた手頃な小型採油機のおかげで、各生産者が自分の畑で獲れたオイルだけを絞れるようになったのです。「小型の採油機が入ったことで、それぞれ、品種が違うものや、日当たりや水遣りの加減の違った特徴あるオイルが搾れるようになりました」と柴田さん。

小型の採油機が大活躍
小型の採油機が大活躍

 例えば、古くからオリーブ加工の研究を続けている井上誠耕園では、熟す前の青い実をなるべく多く使ったオイルを作ることに挑戦しています。青い実には、熟した実より多くのポリフェノールが含まれていて、苦味と辛味が強く草の香りがするそうです。ここからフィルターにかけ、出来あがったオイルは、「緑果」という名前で販売されています。熟す前の実でしか作れないので数量も限定。180gで5400円というお値段ですが、毎年あっという間に売り切れるそうです。代表の井上智博さんは「海外からの大生産地のオリーブに負けないために、手間隙かけて違うものを作っていこう、とお互いに切磋琢磨しています」と話します。

各自がユニークな製品で競争するように

 採油機をそれぞれが持つことで、より特徴のあるものを作ろうと生産者の皆さんでいい刺激が生まれるんですね。

 前述の東洋オリーブでは、収穫後4時間以内にしぼり、しかも、フィルターで漉さず瓶詰めした「無濾過」を販売。空井農園でも、思い切って軽自動車一台分くらいの予算で小型採油機を買いました。おかげでオリーブの収穫時期も、自分たちで決められるようになりました。代表の空井和夫さんは「いつ収穫するのが良いのかを見極めながら、枯れ枝を処理しながら様子を見ることができるようになりました。搾り方の具合も他人にお願いすると難しいですから」と、話します。

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