さまざまな工夫が実を結び、たった1店舗から始まったお店は、わずか十数年の間に全国16店舗を構えるまで拡大。2006年に6億4000万円だった売り上げは、北村さんが社長に就任した11年頃から上昇を始め、わずか3年で約23億円を売り上げるまでに急成長したのです。そのきっかけはある意外な商品を店頭に並べたことでしたが、一体どんな方法で売り上げを伸ばしてきたのか? リビングハウスの成功のメソッドに迫ってみましょう。
【メソッド1】オシャレな(???)で顧客を獲得
【メソッド2】業界初の(???)で買い替え促進
【メソッド3】(???)でインテリアの価値観を向上
まず、メソッド1から見てみましょう。
【メソッド1】オシャレな(???)で顧客を獲得
大阪の南堀江に「オレンジストリート」と呼ばれる、カフェや洋服・雑貨のお店が立ち並ぶ、若者に人気のファッションストリートがあります。そこに、お店を構えるリビングハウス。周囲と比べてもよりオシャレな外観で、家具屋というより、雑貨屋のような入口が印象的です。かつて「立花通り」と呼ばれていたこの辺りは最盛期には50軒もの家具店が立ち並ぶ「家具の街」でした。
しかし、バブル崩壊や大規模店の進出で廃業が増え、今では家具の店は10軒どに減少してしまいました。
そんな堀江の家具店の3代目として生まれた北村さん。実家のリビングハウスはほかの店同様、業績が伸び悩んでいました。

北村さんは大学卒業後の就職先にアパレル業界を選びます。しかし25歳の時に実家の家具店を継ぐことを決意しました。修行のため、父の知人の店で配送の仕事から始めました。1年半の間におよそ1000軒ものお宅に家具を配送した北村さんは、そこで非常に貴重な経験をしました。
「配送先は、もちろん富裕層のお宅もありました。でも9割のお客様の家は『The 普通』という家なんです。ここに隠れている需要があると思いました。配送をやってよかったです」と話す北村さん。
お父様・ご友人には、リアルなお客様の姿を感じ取ってほしいという思いが、あったことでしょう。それをしっかりと受け止めた経験が、後にリビングハウスの店舗のスタイルの礎となっていくことになります。
北村さんがリビングハウスに入社したのは2003年。しかし、それ以降も会社全体の売り上げは、ほぼ横ばいと伸び悩みが続きます。
そんな頃、大きな逆風がリビングハウスを襲います。それは、11年の大阪梅田再開発。大型商業施設が次々と建設され、大阪の中心地・梅田界隈に人の流れが集中しました。新規オープンが続く梅田に人が向かう一方で、リビングハウスがある南堀江一体は客足が大幅に落ち込んだのです。リビングハウスもその例にもれず、10%、20%と来店客が減っていきました。お客様を、なんとか呼び戻さなければ家具は売れない。そのためにはどうすればいいのか、北村さんは大いに悩みます。
家具がダメならスリッパがあるさ
そもそも家具インテリア業は効率のよくない商売だと北村さんは考えていました。その理由は「倉庫・店舗で広いスペースが必要」「買い替えサイクルが長い」「季節性が少ない」「流行性も少ない」さらに「プレゼント需要も珍しい」からです。
確かに、一旦購入すると家具はそう簡単に買い換えませんし、「お誕生日に家具をプレゼント!」なんてあまり聞いたことがありませんよね。そこで、この5つを逆に補う商品がないかと北村さんは考えました。そんな、都合のいい家具ってあるんでしょうか?
「ありました!」と北村さん。えっ! それは何でしょうか?
「スリッパです!」。ス、スリッパですか? 5つを補う家具を考えていたんじゃないですか? スリッパなら、家具の弱点である5つの条件をクリアできると考えた北村さん。
「いきなり家具は手が出しにくいものです。しかし、雑貨ならお値段も手頃なので手が出しやすい。広い意味でのリビングを考えて『スリッパ』を思いつきました」
確かに、広い意味でリビングです。
北村さんは、スリッパ専門の「Skips!(スキップス)」というスリッパのブランドまで立ち上げました。デザインや色などバリエーションに飛んだスリッパは実に200種類にも及びます。しかも季節ごとに新作も発表して買い替え需要を喚起し、スリッパは、家具の持つ5つ効率面の厳しさを補ってくれています。
さらに、北村さんはリビングアイテムとしてオリジナルアートも充実させました。
「日本のリビングは、基本的に真っ白で絵を飾っている方は少ないんです。そこにアートを飾ってもらうと、部屋に遊びが生まれるんです」
確かに、絵を一枚飾るだけで雰囲気ガラッと変わりますし、お値段も1枚1万5000円前後の絵が多いので、季節ごとで買い替えができれば部屋に「遊び」が生まれますね!
「スリッパもアートもリビングアイテムのひとつ」
ここに北村さんの狙いがありました。それらを買いに来たお客さんが、家具に興味を持つようになれば、やがて家具を買ってくれるかもしれないからです。
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