当時、売り上げの7割を依存していたOEMの取引先が経営破綻してしまい、一気に10億円もの負債を抱えることになりました。

 えらいことです!

 突然訪れた経営の危機に銀行も参加し、緊急対策会議が開かれました。そこで出た対策は「新しいOEMの取引先を至急見つけ出すこと」「有機栽培100%の自社ブランドタオルの生産はコストが掛かるので中止する」というものでした。

 社内でも、コストがかかる自社ブランド品から撤退し、OEMに力を入れようという意見がほとんどでした。そうでしょうね。

 しかし、池内さんは、会社の未来のために「OEMに依存する経営から(当時売り上げの1%しかなかった)自社ブランドに賭ける」と、決断しました。えぇ~~~!!! そっちを選択したんですか?

 「驚かれたでしょうね。でもね、新しいOEM先を探しても、また同じことが起こる可能性が高いんです。それなら、自社ブランドで池内の再生に賭けようと考えました。社員ですか? みんな不安だったと思いますが、僕の夢に賭けてくれました」

 こうして、自社ブランドに舵を切った池内タオル。

 すると、意外なところから評価を受けることになりました。それは、米国でした。

 米国最大規模の生活用品展示会で参加1000社のうち5社にしか与えられない最優秀賞を見事獲得したのです。それは日本企業として初の快挙でした。安全性、環境面をより重視する米国で池内タオルの取り組みが評価されたのです。

 これをきっかけに日本国内の百貨店などでも取り扱いが始まり、今では全国50カ所で販売。当初、自社ブランドは年間700万円しか売り上げていませんでしたが、今ではそれを起点に年商5億円の企業へと成長したのです。

 いやはや、本当に思い切った決断です。ここまでの思い入れがあった商品を、見る方はキッチリ見ていてくれているんですね。

【メソッド2】コンセプトを徹底した( 自社ブランド )を確立

 最後はメソッド3です。

【メソッド3】(???)を見つけてもらう直営店を展開

 京都・三条にあるIKEUCHI ORGANICの京都店は、タオルの専門店です。珍しいですよね。

 こちらには、同じような白いタオルが並んでいます。その数18種類。パッと見た感じでは、どのように違うのかが見分けがつきません。そこでこれらを、吸水性と速乾性、肌触りが柔らかいのかしっかりとしているのかを4つの項目でタオルを分類し、それぞれをさらに細かく分けた分布表で分かりやすく紹介しています。

 たとえば、速乾性に優れた「ストレイツ220」と、吸水性に優れた「オーガニック960」というタオルを比べると、吸水性がいい960は表面のパイルが長いという特徴があります。

 しかし、こんなに種類があったらどれを選んだらいいか分からなくなりますよね。そこで、店内には手洗い場が設けられていて、お客さんに実際使ってもらって自分好みのタオルを見つけてもらえるようにしているんです。実際に、使いながら肌感を試せるとは嬉しいですよね。これなら18種類の中から好みのタオルが見つかります。

洗濯した後の肌触りも実感できる店

 さらに、お店には目立つ場所に洗濯機が設置されています。実際にタオルを使ってもらった後、その場で洗濯して、洗濯した後の肌触りも実感してもらうため。商品として売り出す今現在の品質だけでなく、何年も使い続けた未来の品質もお客さんにきちんと伝えるという、お客さん好みの極上のタオルを選んでもらうのです。こんなことができるのも、とことん品質を重視したタオルを作り続けている自信があるからです。

 2014年には、社名を「IKEUCHI ORGANIC」に変更しました。冒頭でお伝えしたタオルメーカーらしからぬ社名の由来は、オーガニックコットンを追求すると同時に、その心地よさを知ってもらうためタオル生地の様々な製品を作っていこうという意識の表れにありました。

 その、IKEUCHI ORGANICにはギフトとして特に人気の「コットンヌーボー」というタオルがあります。有機栽培100%のため、コットンの出来は毎年少しずつ異なります。そんなコットンによる出来栄えの違いをその年ごとの個性として、ワインのように愉しもう! という考えのタオルです。年号入りだから結婚や出産のギフトに喜ばれ、おまけに何年使っても使い心地が劣化しないのもよいですよね。

履き心地がよいと評判のタオルスリッパ
履き心地がよいと評判のタオルスリッパ

 IKEUCHI ORGANICでは、パーカーやスリッパ、ポロシャツにネクタイなどもタオルで作っています。最高のコットンで作ったタオル生地のふわふわ感が、日常使うもので味わえるなんて気持ちいいですよね!

【メソッド3】( 好みのタオル )を見つけてもらう直営店を展開

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