タオルが柔らかくなる秘訣がまだあります。IKEUCHI ORGANICのタオルは柔軟剤を一切使いません。乾燥機の中で、140度の熱風をあててタオルを激しく動かし金属に何度もぶつけます。繊維を叩くことで、生地がさらに柔らかく仕上がるそうです。

 仕上げたタオルは最終の検品作業にかけられます。チェックに引っかかったタオルを見せてもらうと、ミシン糸が少し曲がってフチからはみ出しているだけでも、縫製のやり直しになります。これだけ手間をかけていたら、タオルの値段が高くなるのも当然です。

 「コストを下げる方法はたくさんあります。でも、それを選択して作った商品に『IKEUCHI』の名前は、入れたくないんです。『IKEUCHI』の名前を入れて恥ずかしくない商品のためにも、品質チェックは欠かせません」と、自社の商品に絶対の自信を持つ池内さん。

 その品質は様々なところで確かに認められています。京都駅のすぐ隣という立地と、ラグジュアリーな空間から人気の京都センチュリーホテル。その客室ではIKEUCHI ORGANICのタオルが採用されています。肌触りの良さはもちろんですが、何度洗っても、その質が変わらないことも評価されて高級ホテルで使うタオルとして採用されました。

 日常で使うお客様からも「何度洗っても風合いが変わらないので、結果コストパフォーマンスが良い」と支持を受けています。コストや手間ヒマがかかることは度外視して、良いタオルを作り続けることがお客様に認められていくんですね。

【メソッド1】( コストや手間 )は度外視! 最高品質のタオルを届ける

 次はメソッド2です。

【メソッド2】コンセプトを徹底した(???)を確立

 今年、創業65年を迎えたIKEUCHI ORGANICですが、もちろんここまで来るには大変な道程がありました。

 創業は1953年、当時の社名は「池内タオル」。先代の次男だった池内さんは大手電機メーカーに勤めたのち、83年、池内タオルの社長に就任しました。

大手電機メーカー勤務から家業を継いだ池内計司代表
大手電機メーカー勤務から家業を継いだ池内計司代表

 当時生産していたのは他社ブランドからの委託、いわゆるOEMの商品のみ。タオルメーカーが自社ブランドの商品を作るなど、まず考えられない時代だったそうです。

 そんな池内タオルに転機が訪れました。99年、本州と愛媛県今治市を結ぶ「しまなみ海道」の開通。今治に多くの人が訪れることが期待されました。

タオルを食べ物として作ろう

 「今治で売るためのタオルを作ろう、と考えました。とにかく、自分たちの思いを詰め込んだタオルを作りたかったのです」と池内さん。そうして生まれたタオルが初めての自社ブランドタオル「IKT」。当時としては異例のオーガニックコットン100%のタオルで、ここには池内さんのある決意が込められていました。それは「とにかく、安全性に関しては徹底的にこだわる」とのことです。どういうことでしょうか?

 「赤ちゃんはタオルを口に入れたりします。タオルを『食べ物』として作ろうと考えたのです」と、池内さん。

 そこで目をつけたのが、スイスの「エコテックス」という安全基準でした。クラス1は「乳幼児が口に含んでよい」、クラス2は「肌に直接触れる(下着など)」、クラス3は「肌に直接触れない(上着など)」、クラス4は「装飾用の目的で使用(カーテンなど)」で、世界的にも厳しいという評判でした。

 本来、タオルの用途を考えればクラス2をクリアすればいいはずですが、池内さんの作ったタオルは、赤ちゃんが口に含んでも大丈夫なクラス1をクリアしました。

 「僕たちは、瀬戸内の海が汚れていく公害問題と直面しながら育ってきました。いまは様々な努力でなくなってきましたが、自分たちからそのような問題を起こしてはいけないんです。安全面、環境面に配慮したものを作っていかなければなりません」と力強く語る池内さん。

 工場などで使用する電力も風力発電に切り替えるなど、より環境面にも配慮した生産体制を整備しました。池内さんは、それまでの基準をはるかに超えた安心安全な、口に含んでも大丈夫という、自社ブランドのタオル『風で織るタオル』を作り上げました。

 しかし、開発当初は「OEMで儲けさせていただいて、そのお金で自社ブランドタオルを作るという“ええ格好”していたんです。」と話します。

 当時、売り上げの99%はOEM商品。自社ブランド品は1%にすぎませんでした。そんな中、2003年、会社の未来を大きく変える事件がおこりました。

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