【メソッド1】繁忙期と閑散期の差を(???)で解消
1400年の歴史を誇る城崎温泉。兵庫県の北部・豊岡市にある城崎温泉は、日本海がすぐそこで、山間に旅館や温泉が密集し、端から端まで歩いても20分程度という小さな温泉街です。
豊岡市長の中貝宗治さんは「城崎のビジネスモデルは、夏場とカニシーズンで1年分の儲けを得ていたんですが、すでに夏と冬の時期はお客様が目一杯来られているのでコレ以上の伸びシロがないんです」と話します。なるほど、確かにハイシーズンに受け入れられるお客さんの数に限界はありますよね。市長は続けます。「とはいえ、城崎はカニのイメージが強いので、いきなり日本人の方々を閑散期に呼び込むのはとても難しいんです」。それも、分かります。カニと海水浴以外の城崎の魅力って、近畿に住む筆者も正直ピンと来ないです。
「そこでインバウンド。外国の観光客を引っ張ろう! と」

えっ、外国人観光客ですか? でも、そんな急に来てもらえるようになるんでしょうか。
実は城崎の温泉街は、以前から欧米で定評のある旅行ガイドブックでは高く評価されていたそうです。この流れをうまくつかめれば、今よりもっと多くの外国人観光客を呼べるのではないか?と考えたそうです。
外国人観光客は外湯めぐりが大好き
中貝市長は続けます。「城崎は日本的な情緒が残されている木造三階建ての旅館があって、その町並みの中で浴衣を着て、下駄を鳴らしながらそぞろ歩くんです。わざわざ海外からお越しになる皆さんは、その日本を、そして日本の文化を見たいんです」。
なるほど。実は、城崎を訪れる外国人に、何より支持されているのが「外湯めぐり」。が、町並みや温泉に魅力があっても、その魅力を知ってもらわなければ意味がありません。

そこで、豊岡市が手をつけたのが「駅前の改革」でした。
JR城崎温泉駅前に観光案内所「SOZORO(そぞろ)」という、これまでなかった、英語が話せるガイドが常駐する案内所を設置します。ガイドのお1人ウィンダラー・アナスタシアさんは、城崎を初めて訪れる外国からの観光客に、おススメの宿から、温泉のマナーやおススメのランチに至るまで、何でも教えてくれます。中貝市長は「駅を降りた瞬間からコミュニケーションは始まっているんです。『この街は私たちを歓迎してくれているんだ』と。そのメッセージを送ることができる重要な機能を、この観光案内所は果たしていると思うんです」。
わかります。筆者もそうですが、初めて訪れる海外で「日本語が通じる」というだけで安心感が全然違いますよね。ましてや、オフィシャルな観光案内所となるとなおさらです。
さらに、城崎の魅力を世界中の人に知ってもらうための努力は続きます。海外から直接、旅館の予約ができるサイト「ビジット城崎」を、英語とフランス語でつくりました。これを外国人のマーケティングにさらに活用します。どういうことでしょうか?
「どこの国の方が、どのページをクリックしているかが分かります。例えば、アメリカの方の場合は「リーズナブルな値段の宿」とか「海に興味がある」とか。その国の方に合わせた売り込み方が見えてくるんです」。この外国人の好みや傾向を分析した結果をもとに、各旅館を訪問し少しでも興味が持てるページにするため打ち合わせをします。
また、城崎の温泉街には、2016年2月、ゆかたの専門店がオープンしました。旅館の浴衣が使えない、日帰りの観光客に受けているのが、ゆかたのレンタルサービスです。「いろはプラン」(2160円~)は、浴衣、帯、小物、下駄、温泉かご、着付けにヘアスタイルまで、温泉街をそぞろ歩くのに必要なものは全て揃っています。特に外国の女性客は大喜び!みなさん本当に楽しそうです。もちろん日本人でもレンタルしてもらえます。
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