しかし、最初の1年で売れたのは、わずか3台。思ったように売れません。

 それでも「いつか宅配ロッカーの必要性が分かってもらえるはず」と信じた原さんは、毎年のように改良を加え新作を販売します。それでも、多く売れても年間30台程度。発売当時、宅配ロッカーは認知度が全くありませんでした。

 一方で、売り出したからには24時間体制のサポートは続けなければなりません。人件費の問題にも頭を悩ませていました。

本社を東京に移して郵政省にお願いすること3年間

 そんな時、ある住人からの一言が原社長の運命を大きく変えたのです。

 「『どうして郵便小包は宅配ロッカーに入れてもらえないのですか?』と言われたんです。郵政省の省令に、宅配物の受け取りにはハンコかサインが必要とあったんです。知りませんでした」

 えっ、宅配の根本に関わることだと思いますが、ご存じなかったんですか?

 「はい、知らんかったんです。えらいこっちゃです」

 当時、郵便小包の受け渡しには、受取人の印鑑かサインが必要だったので、無人の宅配ロッカーは対応していなかったのです。筆者が原社長の立場なら、ただただ頭を抱えてうずくまるだけだと思います。

 「でもね、なんで売れへんかが分かったんですわ。よし! こりゃ、いったらなアカンと思いました」

 すぐに解決せねば! と考えた原社長は、急いで東京へ向かいました。当時の郵政省を訪れ宅配ロッカーに荷物を入れてもらえるよう交渉します。しかし、当時の郵政省の役人にとって原さんが大阪で手がけていた宅配ロッカーなど見たことも聞いたこともない代物。そんな地方のビジネスのため、国のルールを変えてくれなどと言っても相手にしてもらえないのは当然でした。さらに厳しい一言が原さんに刺さりました。

 「原さんは大阪でしょ? いつ大阪に帰られるんですか?」

 ……もう絶望的です。

 冷たい言葉に聞こえますが、原さんの捕らえ方は違いました。

 「東京に根がついていないから、大阪に帰るということですよ。これはイカン、真剣に考えなあかんと思いまして、東京にバーンと会社を移したんです!」

 そう! 冒頭に記した本社が東京にあるというのは、まさにこのときのひと言がきっかけでした。原さんは大阪から東京の、それも当時の郵政省からわずか2キロの距離に会社を移転させました。家も東京に引越し。何とも凄まじい行動力です。さらには実物の宅配ロッカーを見てもらえば良さが伝わるはず!と役人を招き、何度も何度もプレゼンを重ねました。

 「東京に本拠地を構えてしっかり話をすると、段々相手に話を聞いてもらえるようになりました」

 凄まじい熱量です。

 こうして交渉開始から3年後の94年、ついに「不在の場合は宅配ロッカーに預けてもよい」という通達が全国の郵便局に出されたのです。国をも動かす原さんの情熱はハンパではありませんでした。原さんは続けます。

 「急激でした!通達が出た日に、大手デベロッパーさんからその日のうちに注文が来たんです」

 やはり、ネックは省令でした。

 国のお墨付きをもらった宅配ロッカーに一気に注文が殺到し、通達の翌年にはおよそ200台も売れ、その後も右肩上がりで売り上げを伸ばし、現在では2万6000台もの宅配ロッカーが全国に広がっています。

 今や当たり前となった宅配ロッカーですが、世に広がるまでに原さんの並々ならぬ努力があったとは知りませんでした。

【メソッド1】世界発の宅配ロッカーを広めるため( 国を動かした )!

 次はメソッド2です。

【メソッド2】(???)に合わせてロッカーを進化

 住民がシェアして使う宅配ロッカー。フルタイムシステムはロッカーというものを売るのではなく、サポートも含めた宅配ロッカーのシステムを売っています。

 どういうことでしょうか?

 例えば、トラブルが発生すれば技術者を派遣し、修理が必要ならば本社で行う。こうした宅配ロッカー購入後もサポートすることで、毎月の管理費を得ているわけですが、お金よりももっと大切なものを得られたと原さんは言います。

 「ウチはセンターもやっていますから、お客さんの声がダイレクトに入ってきます。これが大きいんですわ」

 センターに直接届くお客さんの声は、宅配ロッカーを進化させる、なによりもいい材料でした。

 例えば、「イタズラで変なものを入れられては困る」という声をきっかけに、監視カメラを設置しセキュリティーを強化。

 「子供がもし中に入ってしまったら危ないのでは?」という声が寄せられると、脱出用のボタンを新たに設置。

 さらには寄せられたアイデアをもとに、交通系ICカードでカギを開けられるようにして利便性を高め、クリーニングの受け渡しも宅配ロッカーだけでできるようにしました。

クリーニングの受け渡しも宅配ロッカーでできるようになった

 こうなると、もう宅配ロッカーのない生活に戻れなくなりますよね。