新築分譲マンションでの宅配ロッカーのシェアは70%という、業界のトップ企業です。そんな宅配ロッカーの会社を率いるのが、社長の原幸一郎さん。社長、どうして宅配ロッカーを手掛けられたのでしょうか?

 「いや~決まってまんがな! 私が『ばち~っ』と、やっつけてやったんですわ! 考えたのは私ですねん。わははは!」

大阪出身の原幸一郎社長は、ナニワ流を東京で貫く

 この連載のタイトルは「儲かりまっか?の経済学」。

 主に関西の経営者の方に商売の心意気をお聞きし連載させていただいておりますが、ここまでガッチリ大阪色の濃い社長は初めてかもしれません。強烈なバイタリティーの持ち主でらっしゃいます。

 しかしながら、本社は千代田区と東京のど真ん中。大阪出身の原社長が東京で成功したのには理由がありましたが、それはまた後ほど。

 近年急速に業績を伸ばし、現在の年商はおよそ52億円。フルタイムシステムが宅配ロッカーを世に広めたと言っても過言ではありません。

 ただ、今でこそ当たり前となったこのシステムも、開発当初は見向きもされず、厳しい状態が数年続いていました。では、フルタイムシステムの「熱き」のメソッドを探っていきましょう。

【フルタイムシステムの「熱き」メソッド】
【メソッド1】世界発の宅配ロッカーを広めるため(???)!
【メソッド2】(???)に合わせてロッカーを進化
【メソッド3】宅配ロッカーで(???)の可能性を広げる

 では、まずメソッド1から。

【メソッド1】世界発の宅配ロッカーを広めるため(???)!

 マンションなどで住民がシェアして使う宅配ロッカーを手がけるフルタイムシステムの創業は1986年。同社を一代で築いたのが原社長です。43年大阪・天王寺で生まれ、ラグビー選手としても活躍し大学を卒業し、28歳でマンション管理会社を起業し経営します。このときのある出来事がキッカケで宅配ロッカーは誕生したのです。

預かったゴルフクラブを盗まれて……

 80年代初めのこと。原さんは、よりよい管理サービスをするため、雇っているマンション管理人さんによく話を聞きにいっていました。

 そこで得られたのは「宅配便が増えてきた」という情報。

 原さんは、宅配便が普及し始めたものの不在ぎみで宅配便を受け取れない住民のため、一旦、管理人室で荷物を預かるように指示しました。しかし管理人の勤務は夕方まで。その時間までに帰宅し、荷物を受け取れる住民は少なく、荷物は溜まる一方でした。

 そんなある日、管理人室に入りきらなかった高級ゴルフバッグを仕方なく管理人室の外に置いておくと、それが盗まれるというトラブルが発生し、その補償をせざるを得なくなる事態にまでなったそうです。

 なんとか宅配便の荷物をマンションの住民にうまく渡す方法はないものか? そんな時に考えたことは

 「荷物は自分の手で受取るか、箱に入れるかですから、ロッカーしかないやないですか!」

 人が受け取れないならロッカーに入れてもらえばいい。宅配業者が荷物を入れると、カギがかかり住民は配られたカードキーでその荷物を取り出せる、そんな宅配ロッカーを原社長は閃きました。

 早速、自ら管理するマンションにまずは試作機を設置します。使い方が分からない住民が混乱しないように、とトラブル対応用の電話も備え付けました。

 「電話番でっか? 昼間はウチらの社員が受けまして、夜は家に電話を転送して対応しましたわ。夜中、酔っ払ってるときにも電話あってナンギしましたわ! わははは!」と、豪快に当時を振り返る原さん。

 社長自らも電話番をするなど24時間体制で管理し、その結果見えてきたことがありました。それは「カードキーをなくしたから開けられない」という声が圧倒的に多かったことでした。

 ごく当たり前のことですが、確かに、鍵をなくしてしまったら電話対応では限界があります。しかし、これを解決しないと商品化はできない、と考えた原社長。

 「電話回線で『遠隔操作』ができるソフトが作れるか、ソフト開発会社に聞いてみたんです。そしたら『できます!』と言うんで『ほなら、作っておくんなはれ!』と言うたんです」

 原さんのトーンがだんだん上がってきました。

 結果、ソフト開発会社の協力をとりつけ、遠隔操作でカギを開けられるシステムを開発すると同時に、それと併せて設けたのが、現在も稼動しているコントロールセンターでした。24時間体制でオペレーターが対応し、カードキーをなくしたという住民から連絡がくればセキュリティー認証をした上で、遠隔操作でロッカーを開けられるようにしたのです。

 ただ、開発費用が驚きでした。

 「費用でっか? ははは、4000万円です。わははは」

 よ、よ、4000万円、て原さん。ずいぶんな費用ですよね!

 宅配ロッカーの未来に賭けた原さんは最初の試作機から3年後の86年、宅配ロッカー専門の株式会社フルタイムシステムを立ち上げました。24時間体制、フルタイムでロッカーを管理することが社名の由来です。万全の体制を整え、世界初となる宅配ロッカーの販売を開始しました。しかも、開発に4000万円かかりましたが、まずは宅配ロッカーの良さを知ってもらいたい、との思いから価格は400万円におさえ、不動産会社に売り出します。