たとえ、わずかな差であったとしても、勝てば評価が上がり、人気もうなぎ上り。負ければ人気は落ち、後ろ盾となってくれるパトロンを失うこともあったでしょう。立合は、緊張感のある、自身の座の命運を懸けた大勝負の場だったのです。

人の気はコントロールできない

 人の気ほど移ろいやすいものはない。どれほど一生懸命にやっても認められないときはあります。

 観阿弥、世阿弥の父子は室町時代の将軍、足利義満の寵愛を受けていましたが、義満の死とともに不遇の時代を迎え、世阿弥は晩年、佐渡へ流されています。自分の努力ではどうしようもないことがある。どんな世界でも、それは同じです。明日どうなるかは、自分の力では決められません。

 ビジネスの場合なら、例えば「地政学リスク」があります。ある特定の地域で起こった紛争や、政治的・軍事的な緊張の高まりが、その地域のみならず、世界経済の先行きまで不透明にするリスクのことです。

 日本から遠く離れた国で何かが起こっても、あるいは米国のトランプ大統領のような影響力のある人物の発言によっても、株価や為替レートが上下します。誰もそれを確実に予測することはできません。ほかにも消費税を上げると国が決めたとします。どんなに嫌だと思っても、自分の力で増税を食い止めることは不可能です。

 自分ではどうしようもないことなら、それに翻弄されたり、あらがったりするのではなく、受け入れる。何かが変わるのを待つことが大切です。

 待っていれば多くの場合、転機が訪れます。チャンスと言ってもいい。私の経験を振り返ってみても、「もう駄目かもしれない」というピンチを乗り越えた後ほど、必ずよい風が吹きました。

 男時に果敢に攻める。女時はじっと耐えしのび、やがて来る男時に飛躍するための英気を養う。仕事にせよ何にせよ、心に無用なさざ波を立てずに生きていく秘訣はこの一言に尽きると思います。

 女時には、どんな心持ちで過ごしたらいいのでしょうか。「現状を受け入れたくない」と口にしても事態は何も変わりません。そんなときこそひたすら、今自分がやれることにもっともっと集中して取り組むしかない。そうすれば男時がめぐってきたとき、自分の夢に近づけるのではないでしょうか。

現状を受け入れるほか道はない

 私の経験を振り返ってみると、これまでに何回か、「これはまずいな」と思ったピンチを乗り越えてきています。

 1回目は、ジャパネットたかたの創業前、私の生まれ故郷である長崎県平戸市で、両親と4人の兄弟でカメラ店をしていた頃の話です。突然、あるお客様から契約を打ち切られてしまったことがありました。そのお客様の取引額は当時の年商の約3分の1を占めていたので大きなダメージでした。