「人生は山あり谷あり。男時(おどき)は果敢に攻め、女時(めどき)はじっと耐えしのび、やがて来る男時に飛躍するための英気を養うこと」。ジャパネットたかたの創業者、髙田明氏は世阿弥のこの言葉通り、ピンチをチャンスに変えてきたという。
『髙田明と読む世阿弥』を著した髙田氏(自著を紹介する下記の動画をぜひご覧ください)が、波乱万丈の世阿弥の生涯に触れつつ、自らの経営者人生を振り返る。
これまでの人生を振り返ってみれば年齢を重ねてきた分、経営者としてはもちろん、夫として父としていろいろな経験をしてきました。いいこともあれば、悪いこともある。人生は山あり谷ありです。
自分の実力や努力とは関係なく、何をやってもうまくいくときもあれば、どんなに手を尽くしても駄目なときもあるものです。みなさんもそんな経験を一度はしているのではないでしょうか。
世阿弥はそれを「男時(おどき)」「女時(めどき)」と表現しました。『風姿花伝』の中で、こう説明しています。
「また、時分にも恐るべし。去年盛りあらば、今年は花なかるべきことを知るべし。時の間にも、男時・女時とてあるべし。いかにすれども、能にも、よき時あれば、かならず悪きことまたあるべし。これ、力なき因果なり」(『風姿花伝』第七別紙口伝)
男時とは勝負事において自分のほうに勢いがあるとき、女時とは相手に勢いがあるときのことを言います。世阿弥は、この男時、女時の時流は努力ではどうにもならない宿命だと捉えました。どんなに懸命に稽古しても、うまくいかないときはいかないのです。
世阿弥の時代、能は「立合(たちあい)」という形式で、互いの芸を競い合いました。何人かの役者が同じ日に同じ催しで、勝負するのです。といっても、審判がいるわけではありません。どちらの芸がより見栄えがするか、観客の人気を集めるかで、勝敗が決まりました。
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