私がウオーキングシューズを紹介するとき、何を考えていたと思いますか。今、日本には65歳以上の高齢者が約3500万人います。私もその一人です。テレビカメラの前で、北海道から沖縄まで3500万人の高齢者のみなさんが楽しそうに歩いている姿を頭に描くのです。
日本人の2016年の平均寿命は女性87・14歳、男性80・98歳。いずれも香港に次いで世界第2位です。ただ「健康上の問題がない状態で日常生活が送れる期間」である健康寿命はどうでしょうか。女性が74・21歳、男性は71・19歳(2013年)と、平均寿命とは大きな開きがあります。
このままではよくない。溌剌(はつらつ)とした健康なシニアにメッセージを出していこうと考えたのです。伝えるべきはシューズの底がどうこうということじゃない。「歩くのって楽しそう! 私も歩いてみようかな」という気持ちを引き出すことです。
リンカーンの演説の暗唱で売れ行きが3倍
電子辞書もそうです。従来の「調べる」ではなく、「英語を学ぼう」という打ち出しに軸足を移し、英語学習に関して紹介する比率を 3、4割に増やした途端、ご注文が3倍になりました。
今、キング牧師など偉人の演説の一部を音声データで聞くことができる電子辞書があります。ある日、テレビ通販番組でこの商品を紹介しているとき、リンカーン大統領の演説を再生しました。そのときふと学生時代にこの一節を覚えたことを思い出し、次の文章を暗唱してみたのです。
Four score and seven years ago our fathers brought forth on this continent, a new nation, conceived in Liberty, and dedicated to the proposition that all men are created equal.(87年前、我々の父祖たちは、自由の精神に育まれ、人はみな平等に創られているという信条に捧げられた新しい国家を、この大陸に誕生させた)
これだけで注文の電話が殺到し、30分番組で1億円の売り上げを達成したのです。
電子辞書は機能の進化により、「調べる」だけのツールから、「楽しみながら自分を高められる」ツールに変わってきました。
リンカーン大統領の演説のような例文の読み上げはもともと電子辞書にある機能で、目新しいものではありません。ただ、今まで誰もそこまで大きく取り上げてこなかった。それに改めて注目し、取り出して紹介してみたのです。
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