「誰かに一生懸命訴えかけているのに伝わらない。そんなときは、間がうまく取れていないのかもしれない」。ジャパネットたかたの創業者、髙田明氏はそう指摘する。テレビ通販番組で商品紹介するとき、2秒か3秒、わずかとも思える間があるかないかで売れ行きに大きな差がついたという。
 プレゼンテーションの達人、髙田氏が「伝え方、本質が詰まった教材」と推すのは世阿弥の著作。『髙田明と読む世阿弥』を上梓した髙田氏が、世阿弥の言葉を引きながら間の持つ力を語る。

2018年1月、ジャパネットたかたの通販番組に2年ぶりに出演。社長を務めるV・ファーレン長崎のシーズンチケットを自ら紹介した

 通販番組では必ず価格を言います。簡単に思うかもしれませんが、商品を紹介する中で、どのタイミングで価格を出すか、言い換えればお客様はどの瞬間に価格を知りたいと思うか、そのときを捉えることがとても重要なのです。

 唐突に言ってしまったら、相手の心に届きません。その「ここぞ」というタイミングをうまくつかまえられるかどうかで、売り上げが大きく変わることを私は何度も経験しました。

あらゆる要素を頭に入れる

 それは世阿弥が『花鏡』の中で書いていた「一調・二機・三声」につながります。

「調子をば機が持つなり。吹物の調子を音取りて、機に合はせすまして、目をふさぎて、息を内へ引きて、さて声を出せば、声先、調子の中より出づるなり。(中略)調子をば機にこめて声を出すがゆへに、一調・二機・三声とは定むるなり」(『花鏡』一調 二機 三声)

 能役者が舞台で声を発する際、心と体の中で音程を整え(一調)、タイミングを計り(二機)、目を閉じ、息を溜めてから声を出す(三声)とよい、という意味です。いきなり話し出したら駄目。相手を引き付けるトーンとタイミングを踏まえ、その上で初めて声を出せという教えです。

 能役者は舞うときに「舞台が野外なのか屋内なのか」「曇りなのか、晴れているのか」「風向きや温度、湿度」「どんな人が、何人くらい見に来ているのか」「その日の役柄」「自分のコンディション」「自分は誰と舞うのか」など、あらゆる要素を頭に入れて、一番いい高さ、張りの声を出すタイミングを計っているといいます。何気ないようでいて、これはという必然を探っているのでしょう。