当時、私がエステーの全社的な最優先課題としていたのは「高収益体制の構築」。よって、研修改革プロジェクトの目的は「利益志向経営に対応できる人材を育成すること」だと、メンバーに最初にはっきり伝えました。

 中でも次の3点を重点課題としました。

  • 全社員に経営者感覚を育む
  • 商品カテゴリー別の採算に責任を持つ「事業部制」を支える人材育成
  • グローバル化を推進できる人材育成

 経営トップの私と問題意識を共有すると、チームのメンバーから次々に提言が湧き出しました。

 まず、(1)に掲げたように全社員が経営者感覚を持つ上で「欠けている」と鋭く指摘されたのが、中堅社員向けの研修です。

 従来のエステーの教育体系では、新入社員研修、入社1年後、3年目、5年目の研修を終えると、以降、管理職クラスになるまで研修を受ける機会が全くありませんでした。

 入社5年目までの研修はいわば、社会人としての基礎を固めるためのもの。経営者の視点を伝えるところまではなかなか行き着きません。

 一方、管理職クラスともなれば、既に経営の中核を担い、経営者的な視点を持つ前提で研修は組み立てられています。その狭間で「経営者の視点とはどんなものか。なぜ必要か」を伝える場が抜け落ちていました。

 そこでメンバーからの提案を受けて始めたのが中堅のリーダー層向けのマネジメント研修です。それも一度で終わらせず1年に1回、定期的に。

 通常業務に追われ、研修内容を忘れた頃に同じ対象者に研修を繰り返すことで、経営者の視点を持つ重要性をリマインドしてもらっています。

「世界一周研修」に一工夫

 (2)の事業部制を推進する教育としては、役員候補の人材に向け、未来の事業をつくるための具体的な経営戦略を立案する研修を始めました。

 私はこの研修の冒頭で、目的を社員に直接、伝えるようにしています。例えばこんな具合です。

 「この研修に参加する人たちは、将来の幹部候補生です。ただし、全員が幹部になれるわけではありません。しっかりとした自覚を持って研修をやり遂げてください」

 社長の明確な言葉が社員に競争意識と熱意を生むと思うのです。