例えば、アイトラッカーを活用したデータ分析。アイトラッカーとは、マーケティング調査でよく使う人の視線の動きを記録する装置です。これを装着した消費者に売り場の棚を見てもらうと、トップブランドの「ムシューダ」を見る前後に、「ドライペット」によく目が向くことが分かりました。

 このデータを提示すれば小売店の反応も変わります。やがて相乗効果で2つの商品の売り上げが伸びました。ワンシーズンで見事に除湿剤の売り上げ構成は変わりました。粗利率の低いタンクタイプと高いシートタイプの比率が、5対5から3対7になったのです。

掛け声倒れにしない

 利益重視を連呼しても、残念ながら社員の行動は変わりません。重要なのは段階を踏むこと。私は次の4ステップを意識しました。

  • ①評価の担保
  • ②成果の見える化
  • ③具体策を提示
  • ④行動させ、自信をつけさせる

 行動を変えることにはリスクが伴います。その中でも特に社員にとって気になる人事評価の懸念を取り払う。さらに数字を上げる具体策を示す。“振り付け”を考えるのは社長でも、実行するのは社員。社員の成果として賞賛すれば、自信もやる気も湧きます。

 さらに2016年、人事評価制度を抜本的に改革。営業社員については、売り上げより利益を重視する評価基準に変えました。

 ここまですると社員の自主性は増します。今では、除湿剤以外のカテゴリー、例えば家庭用の手袋でも、自分たちから粗利率の高い商品を積極的に販売しています。

 市場全体にも面白い動きが出てきました。もともとタンクタイプは各社が利益を削って売り上げを競ってきた商品。その中でエステーが利益重視に舵を切り、売り上げ低下も辞さない姿勢を打ち出した。それを受けてか、他社のタンクタイプ製品でも平均単価がアップしました。

 社員の意識を変えられれば、業界の常識も打ち破れます。

(構成:福島哉香、この記事は、「日経トップリーダー」2017年6月号に掲載した記事を再編集したものです)