今のエステーに必要なのは、2つの能力を持った社員です。

 一つは、短期的な数字だけを追うのではなく、長い時間軸でブランド価値を向上させる意義を理解できる人。ひいてはエステーに新たな価値を見いだし、その価値に形を与え、具体的な商品やサービスにする実行力のある人。

 もう一つは海外展開を見据え、グローバルに活躍できる人材です。ただしそこで必要なのは、語学力やありきたりのコミュニケーション力ではありません。自分の頭でこの広い世界のどこにエステーの商機があるのかを考える。そして「ここだ」と思ったら、どこの国のどんな相手であろうと自力で商談を決めてくる。異文化に臆せず入っていける度胸と胆力を備え、かつそこで存在感を示せる骨太な人材です。

想定外の質問で判断

 もちろん新入社員にいきなり、ここまでのレベルは求めません。ですがポテンシャルを見極めることは重要です。

 そのために私は必ず、学生にとって想定外になるはずの質問を用意しています。

 例えば、「今の安倍政権の具体的な政策をどう評価しますか」。政治学科の学生でも固まってしまいました。もし筆記試験で出題したら及第点の答えがすんなり返ってきたかもしれません。ところが面接で突然聞かれると、返す言葉を失ってしまう。

 私は決して優等生的な答えを求めていません。ドギマギするような質問をしたときにどう切り返せるか、見ているのはそこだけです。余裕を持って柔軟な対応ができるか。そこに私が求める度胸と胆力、存在感の片鱗(へんりん)が現れるからです。

 こんな社長の質問に対して、私の目を見据えて答えられるような肝の据わった学生は多くありません。けれども、中にはいます。

 そういう人にはどうしても入社してもらいたい。だから質問をやめて思わず身を乗り出し、切々と語ってしまいます。「ほかの大企業ではできないことがエステーならできますよ」。それでも入っていただけないことはありますが……。

 「肝の据わった学生」を選ぶのにはほかにも理由があります。今いるエステーの若手社員には、素直で前向きなメンバーが多い。他社からうらやましがられるほどです。けれど、私が大手自動車メーカーの新入社員だった頃を思い出すと、もっと生意気で「出る杭」タイプの同期社員がたくさんいて、その後、見事に活躍しています。