とはいえ、社員の意識を短時間で変えるのは難しい。そこでまず、上司や先輩に遠慮しがちな若手社員が表舞台に立つ機会を積極的に増やすことにしました。

工場視察がチャンス

 初めに目を付けたのは、社長の私が工場視察する際の現場の案内役です。従来は幹部が務めていたこの仕事を、若手社員に移管したのです。

 工場の若手は日夜、生産効率を上げるために機械を改造したり、製造工程を見直したりと工夫を続けています。けれど、その工夫を誰かに説明した経験がない。だから自分をアピールするスキルも意欲も育たないのではないか。そう考えて自己PRのチャンスを与えることにしました。

 社長から直接質問され、尻込みする社員を「すごいね」と褒めると、水を得た魚のように嬉々として説明し始めました。

 それを見て、さらに新しい仕組みを導入しました。各地の工場を社長や役員が訪ねる際、現場の若手にカイゼン事例のプレゼンを頼むことにしたのです。

 プレゼンに備えてパワーポイントの資料をまとめ、相手に分かるように話す。ほぼ初めての経験ですから最初は皆、四苦八苦します。でも得られるものはプレゼン力だけではありません。実践を通じて学んできたカイゼンの本質に対する理解が深まり、さらなる成長へのステップにもなります。

 このような若手社員たちの挑戦の場を、工場だけに留めておいてはもったいない。私は全社的な取り組みに広げることにしました。