そこですぐ、自分の会社を立ち上げ、エステーの製品デザインのコンサルティングを始めました。おじからの具体的な指示はゼロ。創業家の人間とはいえたった一人、完全に外様からのスタートです。

 製品デザインをはじめとするブランディングは、私の得意分野。当然、意欲満々です。対して、社員たちは不満顔でした。いきなり来て意見する私に「この製品のどこが悪いのか」という態度です。

 今振り返れば、無理もないことです。それまでエステーは、「機能的価値」を最優先に製品開発を続け、結果を出してきました。

 私にも、その実績を否定する気はありません。けれど、目で見てワクワクするデザインや、思わずうっとりする香りなどの「情緒的価値」を加えられたら、女性中心により広い支持が得られるだろう。そんな思いがありました。

 しかし、社員は私が「デザイン性」などという言葉を口にした途端、自分たちが大切にしてきた機能的価値を否定された気がして耳を閉ざしてしまう。

 外様である自分が、社員に新しい提案の真意を理解してもらうためには、どうしたらいいか。

 そこで私は2つの面から社員に働きかけることにしました。

 まず大切なのは、これまでの彼らを否定していないと理解してもらうこと。言葉で伝わりにくいなら、目で見せよう。彼らが大事にする機能的価値を生かしながら、情緒にも訴えるデザインは可能。その事実を具体的な形で示そうと考えました。

nendoの佐藤オオキ氏にデザインを依頼

 早速、試作品のデザイナー探しに奔走し、何十人にも会いました。

 最終的に依頼をしたのはnendoの佐藤オオキ氏です。06年に雑誌「Newsweek」で「世界が尊敬する日本人100人」に選出され、国内外で数多くの賞を受賞しています。

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