また、社内決算説明会後に提出してもらった社長宛の感想文には、さらなる目標達成への危機感が記されるなど、社員一人ひとりの意識変化を感じる内容が多く、私自身とてもうれしく読みました。

 さて、なぜ目標の利益額を上回ることができたのか。ボーナスという“ニンジン”をぶら下げたからだけではありません。

事業責任を明確化

 一番の理由は、会社始まって以来の組織改革を断行したこと。15年4月、エステーは事業部制を導入しました。

 従来は「製造部」「営業部」といった具合に、機能別に組織を分けていました。それらに横串を刺してクロスさせる形で、「エアケア事業部」「除湿事業部」「防虫事業部」などカテゴリー別に9つの事業部を立ち上げ、マトリックス型の組織に変えたのです。

 遡ればエステーでは、2010年以来、右肩下がりを続けていた利益率を改善しようと、考え得る課題ごとに複数のプロジェクトチームを立ち上げて、社内改革に努めてきました。

 13年に私が社長に就任してからも試行錯誤を続けてきましたが、根本的な解決にはなかなか至りません。その最大の原因は機能別の組織体制にあるのではないかと、私はにらみました。一つひとつの製品の収益に対する責任の所在が曖昧で、ブラックボックス化していたからです。

 新体制への移行後は、新たに任命した事業部長と経営陣で集まり、部門別の課題と戦略を見直しました。例えばエアケア事業部では売上単価を上げるためにどうするか、また除湿事業部では利益率の高い商品の市場拡大をどう狙うかなど、個別のテーマと対策を明確にしたのです。

 事業部長は企画から販売までの収益の全責任を負います。各自が深く考えを巡らし、自主的に行動するようになりました。デザインセンスに乏しいと思っていた部長が率先して洗練された商品パッケージを提案するなど、思いがけない活躍を見せる社員が出てきています。

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