特に返品率の高い防虫剤や使い捨てカイロに関して、数字を改善してほしい小売店をリストアップ。個別具体的に対策を考えました。

 返品削減に秘策はありません。必要なのは、メーカーの営業と卸、小売店が細やかなコミュニケーションを重ねることです。

 なぜなら、返品の起点となる小売店が置かれている状況は1店舗ずつ異なり、しかも刻々と変化します。だからメーカーと卸には、その動きを個別に見ながら速やかに、かつ柔軟に対策をとることが求められます。

埼玉工場の視察研修。工場見学の後に、返品作業所の見学に向かう
埼玉工場の視察研修。工場見学の後に、返品作業所の見学に向かう

 ポイントは3つあります。1つは、小売店に新商品を入れる際、その店に合った納品数を決めること。2つ目は、商品を入れた後、店の売り上げデータを全国やその地域の他店の数字と比較しながら今後の売れ行きを的確に予測すること。3つ目に、売れ行きが鈍った商品の発注止めが手遅れにならないように素早く決断することです。

 動きをいち早く察知できれば、ある店で商品が余っても、他の店で受け入れられるケースが多くあります。同じ卸と取引している店舗同士で融通して、不足している店舗に送ればいいのです。

 こうして返品を減らす仕組みができました。

成果の共有で社員が動く

 もちろん、エステー社員の意識を変えることが大前提でした。私は2つの働きかけをしました。

 まず、全国の支店長たちを返品作業所に連れて行きました。ただ見せるだけではありません。返品の山を分けて、どの支店の返品数が多いのかがひと目で分かるようにしたのです。荒療治ですが、言葉で説明するよりも、事の重大性がしっかり伝わります。

 そして、いざ返品削減が進み始めると、今度はその成果を数字で具体的に説明しました。

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