リブセンスの納会は2部構成で、前半では、私と事業部リーダーが、社員に今伝えたいメッセージを語り、後半は社員同士が親睦を深める立食パーティーで、いわゆる打ち上げです。

 納会のコンセプトは、食事を含めて社員の慰労会であることはもちろん、全社員が集まることで組織の一体感を高める場として重要だと考えています。しかし社員にアンケートを取ってみると、意外に「食事」が全体の印象を大きく左右します。
 どんなに私が社員向けに良いプレゼンをして、「いいね!」と好評を得ても、その後に出てくる食事がパサパサの冷たいサンドイッチで「がっかり……」と判定されると、納会全体に対する社員の評価は「微妙だった」となります。
 たかが食事、されど食事なのです。

 昨年までの数年間、リブセンスの納会は社内で開いていて、後半の食事には、専らケータリングを利用していました。この場合は、社員の「食事満足度」を上げるのは、難しくありません。なぜなら、会場代がかからない分、食事に予算を回せますし、コストパフォーマンスが高くておいしいケータリング会社なども過去の経験から分かっているからです。

 しかし今年は、納会の会場を外部の貸し会議室に変えることを決断しました。

 なぜかと言うと、前半の会社からのメッセージを、社員のみなさんにもっと集中して聞いてほしかったからです。

 大きな会議室のない私たちの本社で納会を開くと、通常業務をしている執務スペースの一角を空けて、社員に集まってもらうことになります。すると、私が話している間も、社員のみなさんはつい、自分の業務が気になってパソコンを見てしまいがちです。これでは、何のための納会か分かりません。

 よって、本社を会場にするのはやめ、いつもとは違う場所で気分一新、会社のあるべき姿と今を知ってもらおう。

 そう考えて、広い会議室を借りて、納会を開くことにしました。

 ところが、ここで大きなリスクが浮上しました。

 コストをかけて会議室を借りた場合、後半の「食事満足度」が下がるかもしれないというリスクです。

打ち上げの「食事満足度」を上げる奇策

 会場に選んだ貸し会議室に「立食パーティーをしたい」と相談すると、「提携業者からのケータリングでご用意いたします」という回答。私のなかでアラートが鳴りました。これまで安心して依頼していたケータリング会社と比べると、食事に満足できない可能性がある。その結果、社員のテンションが一気に落ちる……。過去の苦い経験が蘇りました。

 だからといって、会場を変えることは考えられません。「話をしっかり聞いてもらう」という狙いからすれば、ベストの会場だからです。

 しかし、「食事満足度の低下」というリスクには対策が必要です。

 そこで、私は、リーダー陣を集めた会議で、こう話しました。

 「今回の納会のコンセプトは、社員の慰労会であると同時に、会社全体の一体感を高めることです。そのなかで、社員へのメッセージを『しっかり聞いてほしい』。だから貸し会議室を借りることにしました。食事には、満足できない可能性があります。部下にもその旨、周知させてください」

 会場を決めた段階で、私は、食事のクオリティーを担保する方策を奪われていました。そこで、食事に対する期待値を下げる戦略に出たというわけです。

 その会場に運ばれた食事は結果として「満足できない」ものではありませんでした。そして、社員アンケートでも、なかなかの好評価。自由意見欄には「想像していたよりおいしかった」という声もありました。しかし、もし私が、事前に食事のことに言及せず、社員が昨年までと同レベルを期待していたらどうだったでしょう。やはり「去年のケータリングが良かった」などの声も寄せられたのではないかと思います。