ソーシャルメディアでの「シン・ゴジラ」の評判を振り返ると、ちょっと変わった変遷をたどった印象があります。
昨年春に、庵野監督の指揮の下でゴジラ映画を制作すると報道されると、盛んに話題になりました。
しかし、予告編がリリースされたころには、その熱狂はいったん静まり、封切り直後の映画館では、空き席が目立つというネットの書き込みも散見されました。
しかし、いざ見てみれば「大傑作」というわけで、絶賛が絶賛を呼ぶ展開に……。ここに至るまで、封切りから1、2週間はかかっていたと思います。ほかのヒット映画では、公開直後からソーシャルメディアで評判になるケースが多く、それに比べるとスロースタートでしたが、勢いがついてからの爆発が凄かった。
この爆発には、予告編での期待値調整が少なからず影響していると思います。例え、同じレベルに面白い映画でも、「予想通りの佳作」と評価されるより、「予想を裏切る佳作」というクチコミが広がったほうが、はるかに集客力が大きいのです。
予告編ににじむ、庵野監督の凄味
ただし、このあえて期待値を下げるような作戦は、誰にでも実行できるわけではありません。
「期待していなかったけど、本当につまらなかった」と言われては元も子もありません。そもそも、期待値の低い映画を見るため映画館にわざわざ足を運ぶ人が、どれほどいるでしょう。
予告編がつまらなくても「見てみようかな」と思わせてしまう、庵野監督への期待感、そして、実際に見せてしまえば「予想を裏切る傑作」と観客をうならせられるという、圧倒的な自信なくしては、成り立たない戦略です。
そんな「シン・ゴジラ」のスケールの大きさには遠く及びませんが、実は私にも最近、期待値を低く調整した経験があります。
具体的には、リブセンスが半年に一度、全社員を集めて開く「半期納会」でのこと。今年の夏の納会で、打ち上げの食事に対する社員の期待値を、戦略的に下げたのです。

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