昨年、リブセンスは初めてのM&A(合併・買収)に踏み切りました。
相手の会社のビジネスモデルはとても魅力的なものでした。市場自体も成長している。しかし、その割には業績が伸びていない。改善余地があるからM&Aをしようというのが、私の判断でした。
リブセンスはほかにも、共同事業の形で、伸び悩む事業を好転させたことが何度かありました。その経験から、M&AによってリブセンスのWebマーケティングのノウハウを持ち込めば、業績は伸ばせると考えたのです。
このM&Aに、当初、社外取締役からは少々辛口の意見がありました。それは以下のようなものでした。
まず一般に、M&Aの成功例は極めて少ない。業績計画や買収価格を慎重に精査する必要がある。
さらに、過去の成功経験がすべてのケースに通用するわけではなく、改善には相当な時間を見込むべきだ。
その意見も踏まえて、役員全員で検討し、議論を重ね、最終的には納得の上で、M&Aを実行しました。
しかし、後になって私は、当初の社外取締役の意見が、いかに的を射たものだったかを、思い知ることになりました。
M&Aの痛みで「過信」に気づく
だからといって後悔はしていません。納得して下した決断です。今は、このM&Aを成功に転ずるべく奮闘している最中。手応えもあります。
ただ、あのときに社外取締役が意見した通り、私の見通しが甘かったことは、否定できない事実です。
そこで、改めて気づかされました。
「僕が暴走するわけない。大丈夫」と思っていた自分のなかに「過信」があった。あのときの私は、まさに「自分の正義を疑わないがゆえに、落とし穴にはまる経営者」そのものです。
社外取締役という仕組みにも、理由がある。経営者の暴走を止めるという、その設計思想を軽んじてはならないのです。
現在、リブセンスの社外取締役は、まったくもって形式的ではありません。耳の痛い話も多く聞かされるけれど、経営者として疾走する日々のなか、ひとたび立ち止まり、冷静に考えるきっかけを与えてくれる、私にとって必要不可欠な存在になっています。
どんな仕組みにも理由がある。その「設計思想」を見過ごせば、ことの本質を見誤る。相変わらず、ポケモンGOのあまりに不親切なチュートリアルに不満を感じつつ、そんな真理に感心している、このごろの私です。
(構成:福光恵、編集:日経トップリーダー)
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