『孫正義の焦燥』という本があります。孫さん本人や関係者のインタビューを基に、その人間像を浮き彫りにした1冊です。私が注目したのは、この本の第6章。「『孫史観』による1000年のタイムマシン経営」というサブタイトルで、孫さんのオリジナリティーあふれる歴史解釈が展開され、とてつもなく面白いのです。

『孫正義の焦燥』(大西孝弘著、日経BP社)

 例えば、「千利休は弾薬商人だった説」。
 茶道の大家として知られる千利休ですが、孫さんにかかると、中国からの火薬の輸入を手がけていた死の商人。そのため、千利休は「火薬の納品場所=次の戦場の予定地」など、軍の最高機密を知る立場にあり、その相談のために密室である茶室を使ったのだと述べます。

 また、信長が、戦で勝ったときの褒美として家臣に与えたとされる高価な茶器も、茶室で密談した際のいわば「MOU(Memorandum of Understanding/覚え書き)」だったと例えます。「どこの大名を倒したら、どの城をやる」といった約束の証として、信長は、自分が飲んだ茶碗をその場で相手に与えたというのです。

ユニークすぎる「孫史観」に脱帽

 それに対して、インタビュアーが「そのような解釈は読んだことがない」と言うと、孫さんはこう答えます。

 「要するにね、歴史小説家がみんな文化系なんだよ。文学者だから。戦略が分かってないんだ。戦の価値が分かってない。信長の目線でモノを見ると、全然違う景色が見えてくるんだよ」

 モンゴル帝国のチンギス・ハンに関する記述にも、なるほど!と思いました。
 チンギス・ハンが部下に与えた褒美は、塩と銀。そのうち、肉体労働に不可欠な塩は「労働の対価」。一方、交換価値の高い銀は「命(を懸けて戦ったこと)の対価」であると位置づけます。
 そして現代のビジネス社会に例えれば、「塩」はサラリーマンの給与であり、「銀」はストックオプションであるとします。
 このように、史実の解釈から、現代にも通じるインセンティブの与え方の要諦まで話が広がり、その一つひとつが常識外れで面白く、説得力に富むのです。

 「孫史観」が、歴史学者から見てどう映るかにかかわらず、そこから経営者が学べるものは大きい。歴史を学ぶ醍醐味を、あらためて実感しました。

(構成:福光恵、編集:日経トップリーダー

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