最新兵器の鉄砲が日本に伝来したからといってすぐ、戦場にイノベーションが起きたわけではありません。
 長く不要と思われていた鉄砲が、それを生かす戦術と組み合わされて、初めてイノベーションが起きたのです。
 このようにイノベーションとは、多くの人が知る既存の技術やモノから生まれるものです。誰もが価値がないと思っていたモノを、使い方を変えることで価値ある資産に大化けさせることなのです。

 この話から、話題の何かを思い出しませんか?

信長とグーグルの共通点

 この「信長の3段撃ち」のエピソードから、私が真っ先に思い出したもの。それは、ビッグデータです。

 米グーグルが「Googleアナリティクス」というアクセス解析サービスをリリースしたのは、2005年。もう11年も前のことです。私はまだ大学1年生でした。
 このサービスを使うと、自分自身のブログや、自社が運営するサイトを訪問した人が、どこから入って来てどこへ行き、サイト内でどんなページを見たかといったことが簡単に分かります。さらに、掲載した広告の効果測定までしてくれます。
 このとき、何より驚いたのは、このサービスがなんと無料で提供されたことでした。

 それにしても、なぜ無料? グーグルの狙いが、データ収集にあることは何となく想像できました。しかし、そうやって集めた雑多なデータが、どう役立つというのか、彼らはどう役立てようと考えているのか。当時は、まだ分かりませんでした。

 当時の私の心情は、羽柴秀吉の言葉を借りれば、こうでしょう。
 「――グーグル殿は、何をお考えか……?」

11年前、「Google アナリティクス」が無料提供されたことに、驚いたという(写真:栗原正巳)

 もちろん、今なら誰でも分かるでしょう。

 グーグルが、「Googleアナリティクス」をはじめ、多くの無料サービスを通して集めた膨大なアクセスデータは、彼らの貴重な資産となり、その発展に大きく貢献しています。米グーグルの売り上げの9割を占めるとされる広告収入の多くは、こうして集めたデータが生んだものといっていいと思います。さらに「グーグルマップ」は、自動運転技術の開発でも大きな役割を果たしそうです。

 ところが11年前はどうだったでしょう。多くの人が「データを集めるなんて、なんでわざわざ?」と不思議に思った。
 そうです。データは誰もが見向きもしなかった「現代の鉄砲」。
 グーグルは、無用の長物と思われていたデータを集め、その使い方を変えることでイノベーションを起こしたのです。