ふと考えました。もし学生起業家だったあのころ、「キングダム」のこのくだりを読んだとしたら? あの大抜擢の結末は変わっていただろうか?

 変わらなかったと思います。

 当時の私なら、河了貂(かりょうてん)の大抜擢の決断にほれぼれするだけ。自分もやってみようと、意気軒昂として同じ失敗をしでかしたことでしょう。この物語の背後にある、任される側の心の機微や、その機微を汲んだ任せ方の要諦などは、すっかり読み飛ばしてしまう自信があります。

 同じマンガを読むにしても、何をどれだけ読み取れるかに、人間の成長が表れると思います。前回も紹介した、「解像度が上がる」という感覚です。あのころと比べて、私がこの物語から読み取れるものは、2倍以上になったでしょう。「キングダム」第42巻を読みながら、そんな自分の成長を確認したようで、少しうれしい気持ちになりました。

 最近、私は会社の机の上に、こんなフィギュアを置いています。

村上社長が執務するデスクに置かれたフィギュア

 実はこれ、河了貂(かりょうてん)のフィギュアです。彼女は「梟鳴(きゅうめい)」という「山の民」で、梟(ふくろう)に似た独特のミノを着ているシーンがよく出てきます。そこでフィギュアも、フクロウのミノを着ていて、一見、フクロウそのものなのです。

机上のフィギュアで思いを伝える

 私はデスクの上にあまりモノを置かない主義です。自宅でもそうですが、自分に必要なモノを厳選して、所定の場所にきちっと置きます。

 ところがそんな整然とした机にある日突然、こんなフクロウのフィギュアが出現した。私のデスクにやってきた社員はギョッとして、聞いてきます。

 「これ、何ですか?」

 「キングダムの河了貂だよ。今年はリブセンスの勝ち筋を固める年。これを見ながら戦略を考えているのだよ」

 「バズマーケティング」とでも言いましょうか。私は年初に「今年はリブセンスの勝ち筋を固める年である」と社員に宣言しています。が、忙しい日々のなか、社員は忘れてしまいがちです。それよりずっと……

 「社長の村上が『キングダム』の河了貂のフィギュアをデスクに飾って、戦略を練っている」

 ……という噂話のほうが社内でパッと広がり、深く記憶に刻まれる。結果、このフィギュアは、私の考えていることを効果的に社員に伝える、絶好のツールになってくれると信じています。

 でもそれだけじゃない。じわじわ成長している自分も、実感させてくれるのです。

(構成:福光恵、編集:日経トップリーダー

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