いつもニコニコしているせいか、何かと「ポジティブ」に見られがちな私ですが、事業家としてスランプに苦しんだことがあります。

 スランプには予兆がありました。

 それは、自分と事業が「つながっている」という感覚の変化でした。

 10 年前に起業した直後は、私と事業が、まさに脳でつながっている感覚。

 自分の体がどう動いているのかなんて、わざわざ意識しなくても分かるのと同じように、自分がやっている事業の現状や問題点、進んでいる方向など、すべてが自分の脳とシンクロしていました。例えば、自社が運営するサイトについて、小さな不具合があったり、ユーザーがどう感じるかだったりといったことが、瞬時に分かった。「分かる」というより、「感じる」といったほうがいいかもしれません。自分の体のどこかが傷つくと、脳が瞬時に異変を察知するような感覚です。

 これが、「自分の脳と事業がつながっている」ということです。

脳と仕事がつながっていますか?

 最近、『BLUE GIANT(ブルー ジャイアント)』という漫画が好きで、時々読んでいます。世界一のジャズプレーヤーを目指す若者を主人公にした物語なのですが、ここでも、音と自分の内面が「つながる」という感覚が、重要な要素として語られています。

 楽器を介して人の心を動かすのも、事業を通じて社会を変えるのも、根底には共通するものがある。自分の内面が、外の世界と「つながる」ことが重要なのです。

 ところが、いつのころからでしょうか。会社が大きくなるにつれて、私のなかで、少しずつ「脳と事業がつながっている」という感覚が薄れていった。同時に、正体不明の違和感のようなものが、少しずつ大きくなっていきました。

 ほうきで飛べなくなったキキじゃないですが、「あれ? 前はどうしてつながっていられたんだっけ?」です。