コンビニに多くの商品を並べる食品業界から翻って、私たちが属するIT業界を見ると、ブランドらしきものは存在するものの、そこに本気で力を入れている会社は少ない気がします。その代わり、何に注力しているかというと、数値分析です。

 例えば、テレビCMを流すとしても、どれだけの人にリーチできて、そのうち何人をサイトに誘導できて、いくらの課金につながったか、といった数字を重視します。企画の段階から、効果分析の話に終始してしまいがちです。

 私自身にも、心当たりがあります。実は過去に2度、テレビCMを打ったことがあります。その際、データ分析に血眼になりすぎていました。もちろん、そんな分析結果があったからこそ、費用対効果を計測し、体感値を得ることもできたわけです。が、それと同時に数値分析の限界も感じました。

数字を見るのは、自信がないから?

 異業種の経営者などと話していると、自分と比べて、直感を重視する人が多いように感じます。数字をまったく見ないわけではないけれど、すごく細かく見るわけでもない。
 特に、テレビCMなんて「こんなイメージを持ってもらえるといいよね」くらいの感覚で、バーンと打ってしまう。

 でも、そのときの「こんなイメージ」というのは、いい加減なものではないのです。この瞬間のために日々、研ぎ澄ませてきた本能を「えいやー」とぶつける。そんな手法のほうが、メッセージが届きやすいこともあるのでしょう。

 ついつい数字を見てしまうのは、特に自分の場合には、経験が浅くて自信がないから、という側面もある気がします。

 しかし、リブセンスの長期的な発展を考えると、直感型の事業投資が必要な局面もきっとやってきます。ここぞというタイミングで大きな賭けに出る覚悟も、経営者として必要でしょう。個人として大きな借金を初体験したのは、腹をくくる経験の1つです。

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