そもそも私の辞書には、「借金」と同じくらい、「ブランディング」という文字がない時代が長く続いていました。

 なぜか、と改めて考えてみました。

良きビジネスモデルの落とし穴

 私が学生時代に立ち上げた、アルバイト求人サイト「ジョブセンス」は、広告を出すだけでお金がかかるのが常識だった求人業界に、採用が決まってから課金する成功報酬型の仕組みを導入して、支持を集めました。さらに、採用された人に「祝い金」を支払ったのも斬新でインパクトがありました。

 そんな分かりやすくて、即効性のある武器を持っていたためでしょう。極端に言うと、「この武器さえあれば、何も要らない」くらいの気持ち。実際に、それほど営業をすることなく、お客様に次々に導入していただけました。

 長期的なブランド形成など、考える必要性からして感じてなかったのです。

 しかし、一定以上にサービス規模を拡大しようとすると、そうはいきません。競合する大手は、莫大な費用を投じてインパクトのあるテレビCMを打っています。こうして競争が激しくなるなかで、自社が一歩抜きん出るにはどうしたらいいか。

 そこでブランディングの重要性に気がついたのです。

最近、コンビニで買い物をするとき、自分の無意識の選択を意識するように心掛けている(写真/栗原克己)

 一見、似ているような商品やサービスが並んでいるとき、ユーザーが何を選ぶかの理由は大抵、「何となく」です。けれど、この「何となく」の裏側には、企業が蓄積してきたブランドの力が作用しています。

 そこで、まずは自分の消費行動から。自分のなかにあった「何となく」の理由を、一歩踏み込んで分析するようになりました。

 例えば、コンビニで、どのミネラルウォーターを買うか迷ったとき。水は、ほかの食品と比べて、特に差異化が難しいアイテムです。そこで自分はこのブランドを手に取った。なんであっちのブランドじゃなかったのだろう……。そんな具合に、スタバとタリーズ、コカ・コーラとペプシなどなど、無意識のチョイスを科学するようになったのです。するとそこにはやはり、これまでに蓄積されてきたイメージがあるのです。まさにブランドです。