なかでも今の私にとって、一番気になったのは、「ブランド価値を高める改革」という章でした。
ここで「教科書」の筆頭に挙げられているのが、デービッド・A・アーカー教授の『ブランド・エクイティ戦略』です。ブランドの持つ価値を企業の資産としてとらえるアーカー教授の論文を、星野さんは学生時代に読み、大きな衝撃を受けたそうです。

「ブランド・エクイティ」とは、ブランドが持つ、目に見えない資産価値のこと。企業は短期的な業績にとらわれずに、長期的な視点からブランドの価値を高めるべきと説く。多くの企業の実例を引きながら、ブランドをいかにつくり、維持、防衛し、その価値を高めるべきか、具体的な管理方法を解説する。経営学者で、ブランド論の第一人者、デービッド・A・アーカーの代表作
そして、アーカー教授が挙げる「ブランドの価値を決める5つの要素」を軸に、星野リゾートのブライダル事業を改革していきます。1970~80年代、同社のブライダル事業の成長を支えたのは、白馬の馬車などを使ったメルヘン調の演出でした。しかし、この演出は、顧客からの「認知度」は高いものの、「知覚品質」が劣化していると判断して、中止を英断。懸念するスタッフを説得し、客数の減少といった困難を乗り越えて持論を貫き、新しい挙式スタイルを打ち出していくのです。
ハードルが高そうなら入門書を探す
この本では、読むべき本をセレクトする、星野さんの目利きのすごさも印象的です。紹介されている30冊すべて、読んでおきたい。
とはいえ、『ブランド・エクイティ戦略』は、400ページ以上もある大著。しかも、私がアマゾンで検索したときには品切れでした。これは私のようなアーカー初心者にはハードルが高い、という啓示ではないか。そう考えて、同じ著者の最新作『ブランド論』から読み始めることにしました。
古典的で難しそうな名著を読む前に、入門書になりそうな別の著作から読んでみるのは、私がよく使う手です。社員に読んでほしい本は会社で買って配りますが、そのときにも入門書のほうがいい。もちろん『ブランド論』はすでに配布済みです。
では、なぜ今、ブランドなのか。
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