スマートフォンから始まって、スマートウォッチ、スマートホームまで……。ネットでつながったスマートものがいろいろ登場してきましたが、私が彼に「経営指導」をしていた2015年は、「スマートロック元年」と言われていました。

 鍵穴に鍵を差し、回して開けるこれまでの鍵は、もろにアナログ。これをスマホのアプリなどで開けられるようにしたものが、スマートロックです。

 鍵を取り換える大がかりな工事が必要かと思いきや、今までの鍵はそのままに、粘着シートでドアに貼りつけるといった方法で簡単に取り付けられる。あとはスマホのアプリで開けたり、閉めたり。

 ガジェット好きな私はすぐ、「Akerun(アケルン)」というスマートロックを会社の会議室に取り付けてみました。けれど、今までの鍵の代わりに使おうとすると、結構、これが面倒なんです。あのころは、いちいちアプリを立ち上げて画面で操作する必要があったので、普通に鍵で開けた方が、早かったんですよね。その後、スマホをタッチするだけで開錠や施錠ができるアダプターもオプションで買えるようになりました。ただ、単純な鍵の開閉だけなら、昔のように手で回しても、それほど手間は変わりません。

 そんなわけで会議室に設置したスマートロックはすぐに取り外してしまったのですが、これを、パーソナルトレーナーの彼にプレゼントしました。スマホで鍵を開けられることで広がる、鍵の可能性を感じたのです。

一人きりでも多店舗展開?

 そのころ彼は、事業を拡大するべく、拠点となるジムを自前で持ちました。

 けれど、相変わらず、個人の自宅を訪問する仕事が多くて、ジムを留守にしている時間が長い。その間、誰かにジムを使わせて対価を得てもいいはずですが、受付を雇う余裕はない。

トレーニングしている姿のイメージ(写真/栗原克己)
トレーニングしている姿のイメージ(写真/栗原克己)

 そこでスマートロックの登場です。スマートロックを使うと、一時的にほかの人にスマホで開錠や施錠をする権利を与えることが可能になります。

 スマートロックなら、お客さんがスマホを持ってさえいればいい。受付がいなくてもジムを貸すことができ、鍵を手渡しするのと比べて、格段に手間がかからない。利用者がジムに入った時刻と出た時刻を確認して、利用時間を把握するのも簡単。短時間にスペースをレンタルするのには、とても都合がいいのです。

 そう考えていくと、ほかにも応用できる場面が思いつく。特に、零細な事業主にとって利用価値が高い気がします。例えば、飲食業界では、アルバイトが退職後、預かっていた鍵を悪用するなんていう事件が多い。物理的な鍵のやりとりが、トラブルの火種になりかねない場面で、その火種を根絶できます。

 その後、私のパーソナルトレーナーは、スマートロックを使った小規模なジムの多店舗化に着手しています。

 私の体重も、順調に落ちています。この2年でなんと8キロ減。上場以降の過去最低体重をキープしています。この間の土曜日もジム並みの筋トレマシーンを使って足腰に肩、腹筋、背筋を鍛えました(上の写真はトレーニング時のイメージ)。私、健康です、健康。

 おや、もしやITは、私たちを「幸せ」にしているかもしれません。うーむ……。

(構成/福光恵)

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