例えば「ボウリング・フォー・コロンバイン」。1999年、米コロラド州のコロンバイン高校で2人の男子高校生が起こした銃乱射事件が素材になっています。が、事件のセンセーショナルな側面に流れることなく、その背景にある疲弊した町や貧困にあえぐ人たちの姿を丁寧に追っている。
作品中の、こんなエピソードが印象に残りました。ムーア監督の故郷、米ミシガン州フリント近郊のマウントモリスで起きた、6歳の小学生による同級生の射殺事件。犯人となった少年の母親は、低賃金の仕事のために、遠く離れた町まで毎日バスで通勤し、疲れ果てて我が子に愛情を注ぐ余裕すらなかった。富裕層がその富をますます増やしていくその影で、貧困層の苦しみは次々連鎖していく現実を浮き彫りにしています。
この映画が公開されたのは15年前ですが、その後も、世の中の閉塞感はひどくなるばかりです。コロンバイン高校で銃乱射事件を起こした高校生2人組ではないですが、「こんな世の中でやってられるか!」とか、「自分が世界をリセットしてやる」といった事件は、これからも起きてしまうのではないでしょうか。
ファーストクラスが人間を凶暴にする?
背景にあるのは、資本主義の歪みです。
例えば、飛行機で、エコノミークラスの乗客が、ファーストクラスの客席を通って搭乗すると、エコノミークラスの客席に直接入る場合と比べて、暴行を働いたりする確率が2倍以上高まるという。これもまた、経済的な格差が人の心を歪ませることの証左でしょう。
具体的には、旅客機で乗客による暴行などの迷惑行為が起きた記録を調査。エコノミークラスの乗客が迷惑行為を起こす確率は、ファーストクラスがある旅客機のほうが、エコノミークラスしかない旅客機よりはるかに高く、3.84倍。そのなかでも特に、エコノミークラスの乗客が、旅客機の前方からファーストクラスの客席を通る形で搭乗する場合、エコノミークラスの乗客による迷惑行為はさらに2.18倍になる。しかも、このような構造の旅客機では、ファーストクラスの乗客による暴行なども著しく増え、迷惑行為が11.86倍に。目に見える格差は、弱者以上に強者を横暴にすると読み取れる。

リブセンスの経営理念は「幸せから生まれる幸せ」です。お客様を幸せにするサービスを実現することで、私たちも幸せになる。この理念をまっすぐに追いかければ、今の「歪んだ資本主義」を変える何かが出てくることだってあるかもしれません。
しかし、ムーア監督の映画を見るにつけても、あらためて考えさせられます。これほどまでに歪みを拡大させ続けている資本主義の枠組みのなかで「幸せから生まれる幸せ」を実現させるのは、相当難しい。「ポスト資本主義」とでも呼ぶべき、新たな価値基準を、自分たちでつくらなくてはならないのでは?
そんな思いを巡らせるうち、ある事業アイデアが浮かびました。
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