ヤフーがソニー不動産と資本提携して、個人所有の中古物件情報を紹介するサイト「おうちダイレクト」を立ち上げた。ヤフーというポータルサイトが特定の不動産事業者に送客する構図に対して、約300社が加盟する大手業界団体不動産流通協会(FRK)が「不動産情報サイトの中立性を損ねる」として反発し、昨年12月にヤフーへの情報提供を取りやめることを決めた。これに続いて、全国宅地建物取引業協会も「ハトマークサイト」からヤフーへの物件情報提供を2月下旬で中止すると発表した。

業界内の軋轢と折り合いをつけるには

 こうした鳴り物入りのサービスながらも、「おうちダイレクト」は、先日の日経MJの記事によるとサービス開始から3カ月がたって成約に至ったケースはないという。まだまだ知名度を上げることが先決という状況にある。

 このサービスは売り主からの仲介手数料をゼロで設定している。不動産仲介業では手数料の価格競争は禁じ手である。安易な減額が業界の収益構造を脅かすからである。仲介手数料も払わずに一般の方がほぼ独力で納得の行く売却をするのは難易度が高いかもしれない。

 新興IT企業が不動産業へ参入するケースは他にもある。昨年10月、公益社団法人の首都圏不動産公正取引協議会は、東証1部上場企業のリブセンスに対し、「不動産の表示に関する公正競争規約」に基づいて指導を行った。同社はネット上で誰もが閲覧できる不動産価格推定システムを稼働し、中古不動産売買サービス「IESHIL(イエシル)」を立ち上げ、仲介業者を紹介するという。

 どちらのケースにも言えることは、不動産業界を巻き込んでのムーブメントではなく、孤立した事業となっている点である。不動産仲介業は取引に不慣れな顧客と不動産業者が成約した時に手数料を払う仕組みになっている。また、不動産業者同士が契約をまとめる努力をするから成り立っており、独力でできることには限界がある。

 顧客の中には、気まぐれに売るのをやめたり、カードローンなどの債務が多いのを隠して上客気取りの人もいる。そんな顧客の質の悪さへの自己防衛のため、不動産業は情報操作をしている側面もある。一方、不動産業者が自分の手数料を増やしたいがゆえに情報の囲い込みをしたりするのは顧客のためにはならない。売買当事者と不動産業者はきつねとたぬきのだまし合いの様相であり、人間同士の信用問題を解決しないことには、問題の解決に近づいてはいないのだろう。

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