相続税対策のためにマンションを買う方は資金を潤沢に持っているケースが多い。このため、売買契約の際に「ローン特約」という条項を入れない。ローン特約とは、ローン審査で落ちたら、無償で解約できると言う契約条項で、買い主に有利で売り主には不利な特約になる。契約してから1カ月後に決済して引き渡すとしていても、ローン審査に落ちてしまえば、売り主はまた初めからやり直しとなってしまうからだ。この特約が行使されることが意外に多い。

購入者側のローン審査が重要な理由

 そこで、契約にローン特約を盛り込まずにおくと、買ってくれる可能性が高い相手と売り主が判断するので、いい物件が回ってくるようになる。「この人は買うと言ったら必ず買える」と分かっていると、確実に決済したい人には頼りにしたい買い手になる。実際、相続税対策の資産家を抱えていると、流通する前の物件情報や新築のキャンセル住戸などが舞い込むのは、こうした事情があるからだ。仲介業者も早く確実に決済することで、自分の成績を上げることができる。

 ここから分かることは、買い手は事前にローン審査を通しておかないといけないということである。自己資金が1000万円でローン審査が5000万円通っている人は6000万円の物件が確実に買える。こうした購入者側の準備が、良い物件を呼び込むために非常に重要になってくる。

 「離婚」「破産」「相続」が物件を売り急ぐ3大理由になる。この時、弁護士や金融機関のニーズは「早く現金化したい」である。早く確実に買ってもらえるのは買い取り業者だが、彼らの購入価格は相場の2割以上安くなる。転売するため、2割安く仕入れないとたいした利益が出ないからだ。自宅購入者でローン審査に通り、すぐに決済できる人がたくさんいれば、2割まで値引きたくないマンション物件がおのずとやって来るようになるだろう。

 また、どんなに売れ行きのよかった新築マンションも必ずキャンセル住戸が発生する。その物件の購入意思があった人も、販売当時から1年も経つと既に別物件を購入していたりして、あてがうことが難しいことも多い。新築はモデルルームを閉めてしまうと販売現場もなくて売りにくいため、デベロッパーからキャンセル住戸や売れ残りの値引き住戸がやって来る。これもすべて買い手の購入能力を当てにしているので、ローン審査を通して買える状況をつくっておかない人にチャンスは絶対に回ってこないのである。

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